妊娠、出産のときに、スピリチュアル・トラップ(以下スピトラ)に陥りやすいことは、「妊婦さんあるある」なのではないかと感じている。
一般的にスピトラにはまる背景には、人生のつまづきや不安感があると思う。
妊娠出産なんて、まさに体もメンタルも激変期なのだから、スピトラに落ちてしまうのは当然と言えば当然だろう。
そこで、この本は、そんなスピトラ回避のガードレール、または、もう落ちている人へ投げる縄ばしごと言えるのではないか。
そういう本なので、これまでのスマナサーラ長老の育児本とはちょっと趣が異なる。
その最たる部分は、第一部 第二章の「親子関係と業(カルマ)の真実」だ。
業や輪廻などにまったく関心がない人は別だが、実はちょっと興味があって、スピリチュアル系の本を読んだりしているという人にお勧めしたい。
また、子育てがすでに終わった人にも、「すべて捨てて逝くのだ sabbaṃ pahāya gantabbaṃ (サッバン パハーヤ ガンタッバン)」というブッダの言葉から、子供や孫との関係を含めたアドバイスが説かれている。
さらに、育児にも孫関係にもまったく縁がない人にも、自分と親との深いつながりが紐解かれるというスリリングな内容になっている。
やっぱりブッダの智慧は結局、全方位的に向けて語りかけられているのだ。