質問
「わたしは仕事を選んでしまう癖があります。
この仕事は自分に向いているのか、と考えてしまって、結局仕事を絞れないまま、複数の仕事をしています。仕事に対してネガティブな感情を持っていますが、一生懸命働きたいと思っています。どうやったら楽しくポジティブに仕事を決めて進んでいけるのでしょうか」
回答(スマナサーラ長老)
仕事でネガティブ感情が、やはりあまり良くないんですね。
これはかなり大きいスケールで見たほうがいいんです。
人間なら仕事をしなくてはいけないんです。というか、もっと大きく見れば、生き物なら、仕事をしなくちゃいけないんです。仕事の基本から動物たちは離れていません。仕事とは、食べるものを見つけることです。食べるもの、住むところ、動物には服はいりませんからね。
動物はちゃんと仕事をしています。
文句言わない。だから川に飛び込んで、海に飛び込んで魚を捕る鳥たちがいるでしょう。あいつらは「なんで俺がいつでも海に潜って魚を捕らなくちゃいけないんだ。面倒臭い。それより山の方に行って餌をとるぞ」と思っていません。自分にできる仕事をして餌を採って生活をしています。
それが人間になってくると、仕事の分野が変わるんですよ。
人間がいろんなことをするんですね。結局は基本を見ると、お金をもらうためでしょう。お金をなんでもらったのかというと、自分の食べるもの、住むところ、着るもの、そういう体に必要なものを揃えたいんですよ。それだけなんです。
ですから、そのために自分が何かしてあげなくてはいけないんですね。それは仕事がたくさんあるんだから、人間の社会ではね。なんでもいいんです。
質問者
「わたしの母は専業主婦で、父がちゃんと働いていたので、それで幸せに暮らしている様子をずっと見てきたので、専業主婦に自分はなりたいなと思ってきたんですけど、ただ、時代の流れとしては主婦ではなく自立して働こうという時代になっているのと、主婦であることのリスクというのを感じています。
でも、母が専業主婦として幸せに暮らしているのを見てきているので、自分もそれでいいのかなという気持ちが出てきます」
だいたいそれは、女性に特別にある問題ですからね。
専業主婦というのは一番立派な仕事なんです。総理大臣になるよりも。
仕事を評価されてないんですね。それが問題です。
だからあなたのお父さんの仕事とお母さんの仕事なら、お母さんの仕事の方が一番立派なんです。これは簡単にわかります。例えば、ある人が専業主婦で頑張っていて、旦那さんが突然病気になって倒れたとかね。それで女性の方が死ぬ? 死なないんです。旦那さんの分も自分でするんです。だから専業主婦というすごい時間がかかる仕事にもかかわらず、旦那さんの分の仕事もできるんです。収入を得ることも。ということは、外に出て収入を得ることはそんなに大したことがなくなっているんです。論理的に計算してみると。
ですから専業主婦ということも仕事なんです。
何かを一生懸命やっている。自分の命と周りの命を助けてあげているんですね。だからあなたのお母さんは「わたしはちゃんとあなた方よりも頑張っていますよ。わたしがいなかったらお前たちはダメでしょう」というすごく偉そうな気分でいるんです。それは合ってますよ。正しいんです。
しかし時代的には、それだけが自分の人生だと思っちゃうと、すごく物足らないんですよ。
お母さんであろうが人間は人間だからね。人間として成長しなくちゃいけないんですね。だから、この仕事がなくなっちゃうと、それでも女性は体が元気なんですね。専業主婦の仕事がどんどん減っていって、やることがなくなっていく。子供達が、お嫁さんが仕事を取っちゃうんですね。おばあちゃんのご飯まで作っちゃう。それでウツになっちゃうんですね。それがすごくかわいそうです。人間としてもう一つ育てるべきことを育ててないんですね。
だからこれは仕事で、ということで、わたしは自分の幸せのために別のこともやらなくちゃいけないということが必要ですね。
色々勉強したり、社会福祉をやったり、いろんなことをやらなくちゃいけない。そうすると、ウツになったり、認知症になったりとかという危険性は避けられます。
現代では、旦那の収入で足らないということがある場合は、奥さんも仕事をしなくちゃいけないということになっちゃうし、それならちゃんとお互い割り当てを決めてやらなくちゃいけないしね。
かえって現代的に考えれば、女性は昔と違ってしっかり勉強しているし、しっかり能力を持っているし、男よりも真面目に勉強するしね、この能力を無駄にするのはとても失礼なことなんですよ。だから男女差別をまるっきり消しちゃって、お互いに人間だと、自分の能力をフルに活かしてやるぞということは、それはそれで一番立派なことなんですね。
この世の中がダメになっているのは、下手な連中がやっているからでしょう。ですから、適切な仕事についたほうが、世界全体的にうまくいく。それがなかなかチャンスがないんですね。能力があっても、あんたダメと言っちゃう。女だからとかね。それをよく人間は言うんだからね。
子育てにしても、男の方がものすごく上手だったら、その人がやるべきなんです。必ず女の仕事だとか、どうやって決められますか。おっぱいあげるくらいは女がやらなくちゃあかんだけどね。育てることは、すごく上手な人がやらなくちゃいけないんですよ。だから、わたしたちは何が上手かって言うことは私自身で発見しなくちゃいけないんですね。
あなたは何が上手ですか?
仕事を選ぶんじゃないんです。あなたの能力を活かしてあげてください。仕事の上下関係はないんだから、なんでもいいんです。道路掃除でもいいんです、お金をもらえば。
だから何が上手ですか?
例えばいろんな会社なんかにいくと、受付とかね、インフォメーションのところに女を入れているでしょう。わたしはなんで女ばっかりですか、これは女性差別じゃないのかと思ったりすることがないわけでもないんだけど、やっぱり女性っていうのは人と喋ることが上手なんですね。相手がギャアギャアと言ってもあまり気にしない。それだったらやっぱりインフォメーションデスクにはすごく合ってますね。相手は何をいうかわからないんだから。
そういうことで、この能力を活かしてあげることだけなんですね。
あの仕事はいいんじゃない、と言ったところで、自分にできなかったとしたら迷惑もいいところですよ。雇った方にしてもね。あなたを雇って良かったということにならないと、アウトなんです。あんた仕事を辞めたら困りますよ、と雇う側に言われるように、頑張ってみて、それなりの仕事を探してみてください。
憧れの仕事は、気をつけてください。
憧れの仕事というのは、自分の感情や欲以外何でもないんです。われわれは自分にないものに憧れるんです。自分にあるものは面白くないんです。それにやられてはいけません。
わたしも歌うこととか、出家はやりませんけど、憧れます。なぜかというと、自分では歌えませんね。自分で楽器なんか演奏すると、ああいいねえこの能力は、わたしにもできるとありがたいなと思いますが、できませんね。だから憧れるのは能力がないところ〔分野〕です。
仕事の場合は、この落とし穴に陥ってはいけません。
憧れの仕事を探すんじゃなくて、自分が持っている能力をどうやって活かせるのか。
そこで簡単にプロになれます。
(終わり)
法話と実践会(スマナサーラ長老)ゴータミー精舎2017.11.12
https://www.facebook.com/jtheravada/videos/vb.138184189576792/1556274701101060/?type=2&theater
を聞いて書きました。
スマナサーラ長老の法話メモ(@jtba_talk)/2017年11月12日 - Twilog