ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

うつ病と家族

質問

「私はうつ病で休職しています。妹が私を心配して助けようとしてくれて、結果として悪い方へ引っ張られてしまいました。どうしたらいいでしょうか?」

 回答(スマナサーラ長老)

人間は自分の世界の中から外を見ています。

あなたはあなたの世界観から妹を見ています。妹は妹の世界観からあなたを見ています。

それをまず理解します。

「これは私の見方であって、世間は同じように見ていないんだ」と。だから自分の意見を通そうとするのは法則違反なんです。

どうして相手が自分の見方をしなくてはいけないんですかね。あなたの世界観が完ぺき正しいという保証があれば仕方がないですが。そうではないでしょ。

 

どう言えばいいでしょうね。みんな自分の世界を持っていて。

自分だけに限った世界を持つことは誰にでもあることで、それで人間はなかなかうまくいかないんです。

初めから人間関係は上手くいかないようにできています。

 

それぞれ型が違うものをぴったりとはめられませんからね。社会を作ろうと思っても、一個一個がはめられないですね。ガタガタなんです。夫婦の間でも同じです。

それが人間の世界です。

 

ごまかしても意味が無い。事実を見るんです。

だから我々はこうします。「人権を守る」これがカッコいいんです。

 

たとえば、妹さんの人権を守る場合は、「どうぞ言いたいことを言ってください」と言う。それで妹さんの人権を守ることになります。ほかの人、例えばお母さんが、別な角度からあなたにギャアギャア言っているかもしれませんよ。そしたら、「よくわかりました」と聞く。それでお母さんの人権を守ってあげる。

人が何と言っても、結局はあなたは自分の見方で見て自分で判断するんですから、あなたの人権もとっくに守られています。

 

人間は人に言われたことをやると言うのはあり得ないんです。人に言われたことを自分の角度から見て判断してやってるんです。

 

だからこの人間と言うのはお互いなかなか合致しない。仏教的には「人権」ではなく「生命権」です。仏教は人間だけではなく生命論ですから。

 

それぞれ生命には自分の生き方があります。猫には猫の生き方があります。それは変えられません。変えようとするなら、人(猫)権侵害でしょ。

 

そういうことで、人権を守りますと決めちゃえば、あなたは結構成長すると思いますよ。

 

自我が強すぎて問題が起こるんですね。人権を守ることを決めたら、自分の自我がすごく滑らかに、柔軟になってしまいます。

柔軟になったらうまく人と付き合うことができます。

それが答えです。

誰かを直そうとしないんです。

 

で、難しく話をするならば、誰でも主観があって、「自分が正しい」と思っています。そこが問題なんです。

 

よく考えてみれば、正しいはずがありません。10人の人間が10種類の主観を持っていて、「私の意見が正しい」と思っています。これはそうじゃないんですね。本人が意図的に間違った主観を持つことは不可能です。

 

私が私の考えを持つでしょ。「私の考えが間違っているんだよ」と言うことはあり得ないんです。自分が正しいと思っているんです。しかしもうちょっと理性的にみると、「これはちょっとおかしい」。よく見ると、三人三様の意見ですね。

 

というわけで私の意見は正しい、ということはないんだ。

「ただ、間違っているところは私には分かりません」という風に人権を守ればいいんじゃないですかね。

 

ラーメン食べたい人はラーメンを食べて、パン食べたい人はパンを食べればいいでしょう。ラーメンとパン、どちらが正しいんでしょうかね。結局、同じこっちゃでしょう(笑)

 

ラーメン食べたい人の人権を侵害して、「あんたパン食べなさいよ」と言うのはどういうわけか? みんなそれをやっちゃいますから、世界はハチャメチャ苦しいんですよ。

 

例えば会社で仕事をする場合は、自分の主観は通じません。自分の我が強くて、「私の意見が正しい」と言うと、職場でぶつかってトラブッてしまいます。色々病気になったり、仕事をやめたりと言う羽目になってしまいます。

 

柔軟な性格の人の場合は、「この場合はこの人の意見に従いましょう」「こちらの場合はこちらの意見に従いましょう」と自分は柔軟にいる。部下と上司の立場で自分が部下だったら、上司の意見に従う。家でも母親が上司と同じようなことを言う。母親が上だからね。

 

よく考えると、自分が人間で人間と一緒に居るんだから、自分の意見が通じるチャンスはほとんどないんです。

 

たとえば、親が子供を育てるとき、親は自分の意見でしつけをしたいのですが、うまくいきません。子供は自分の主観を持っていますから。子供は世間知らずだから、大人の言うことを聞いた方が安全なのに、聞いてくれないんですよ。

 

自分が産んだ子供にも、自分の気持ちが通じないこの世の中で、自分の意見が通じると思ったら、人間失格の独裁者以外、何者でもありません。独裁者は残酷で、人の人権を粉々にします。それ自体は極悪でしょ。

 

我々は独裁者になれるくらい自我が強くないでしょ。だから人権を守ることしかないんです。

 

それで苦しくなったりもしますが、しょうがない。それでも妹の人権を守ってやらなくちゃいけないんだと。そうすれば、言葉はきつくても落ちつて、穏やかになる。

 

それで正しい生き方が、あなた、見つかると思います。

 

法話と実践会 2014,11,23 http://www.ustream.tv/recorded/55726413 

動画上で01:12:00~01:27:00頃よりメモしました。

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