質問「怒らないようにしていると、相手が調子に乗ってなめてくることがあります。どう対応したらいいですか?」
回答(スマナサーラ長老)
いくつかに分けて説明します。
純粋に仕事関係であれば、割り切って付き合うことができます。
人間は感情で仲良くします。気に入る人、気に入らない人。
感情で付き合うから、あらゆる感情が人間関係に割り込んできます。しかし知識だけで付き合うのは、なんか冷たいんですね。
そこで仕事上の関係でも、感情を入れて付き合おうとします。感情と言うのは貪瞋痴ですから、これはどうしようもありません。
知識も感情でもなく、理性で付き合いましょうということです。
理性とは事実ですから、事実の範囲で人々と付き合ってみるんです。
事実の範囲と言うのは、親族とか家族とか、仕事上の付き合いとか、電車で隣り合った人など、どの程度で付き合いましょうかと見えてくるんですよ。
たとえば突然、2,3歳の子供と付き合わなくちゃいけなくなる場合があります。そのときも必要なのは理性です。その子供にどんな風に対応して、どんな冗談を言って、どんなことをしゃべればいいかということが見えてきます。
そういうことで、われわれはできるだけ理性で付き合ってみようかとがんばらなければいけません。
理性で見ると、たとえば、この子を抱きしめてあげなくちゃいけない、と出てくるんですよ。ちょっとおだてなくちゃいけない、落ち込んでいるから、とかね。
そうすると、感情が割り込まないんですね。すごくうまくいきます。
質問に対する答えの一つは、理性で行うものである、ということです。
そうすると、怒りの感情が割り込んできません。
これは知識とはちょっと違います。
知識はすごく冷たいんです。
知識でなく、理性で事実を見て、どの程度付き合うかということが、はっきりとわかります。
まずそこを勉強しておきましょう。
次の答えは、「なめられてしまう」ということについてです。
周りの人が、「この人は怒らないんだ」と思っているということは、ある程度、怒らないことがうまくいっているということになります。でも、人をなめていいわけじゃないんですね。
怒らずに優しく対応してくれる人を決してなめてはいけません。その場合は、しつけをすることが大切です。それだけです。
相手が、調子に乗って自分の思い通りにしようと企んでいるときは、われわれは「しつけ」という言葉を入れたほうがいいんですね。よく覚えてください。
日本語でしつけと言うニュアンスは、私にはよくわかりませんが、仏教用語では言葉が二つあります。「アワワーダ」と「アヌサーサナ」です。
ブッダの教えには、ほとんどすべて「アヌサーサナ」といいます。しつけなんです。お釈迦様は人類の師匠ですから。
「アヌサーサナ」と言う場合は、優しく「あなたはこのように育ちなさい」と教えることです。
もうひとつの単語「アワワーダ」は、「何をやっているのか、直ちにやめなさい。けしからん」と、過ちを正すことです。
しつけは二通りです。過ちを正すことと、指導すること。
質問の、相手がなめてくる場合は、「アウワーダ」です。厳しく、「やめなさい」という必要があります。
このように、しつけは二通りの方法が必要だと覚えておいてください。
お釈迦様が「アウワーダ」を使うときは、出家に対してだけでした。在家には「アヌサーサナ」です。
(関西月例冥想会 2014.12.14 https://www.youtube.com/watch?v=RMrFavG8fG8
より、メモしました)