(スマナサーラ長老の子供時代【性格は直せるか(3)】から続きます)
完璧には生まれませんよ、人間で。完璧で生まれたらそれほど不幸なことはない。
そう言う間違ったケースもありますよ。文句ひとつない環境で生まれたり。お金はあるわ、カッコいいわ、頭も悪くないわ。しかし人生はダメになってしまう。
皆様はすごくヨーロッパ主義でしょう。ベートーヴェンやらモーツァルトやら、または画家のことを知っているでしょう。彼らの人生は最低最悪でしょう。なのに、いまだに、みんな「すごいすごい」と言うようなものを残して死んでいるんですよ。
ベートーヴェンは耳が聞こえなくなった。音楽家の命は耳でしょう。それでベートーヴェンが挫折しましたか? 耳で聞こえなくても頭で曲が作れた。だから天才ですよ。それを使ってくださいと業が言っているんです。
成功者と言われる人々を調べてみると、その人々はものすごいハンディがあってそれを乗り越えているんです。
それも、悪いことに「どうしてもこれだけは」というものを失っているんです。なくなったら本当に困る能力を失っています。なのに、ちゃんと道を切り開く。それが人間ということです。
だから性格的に暗いとか、そんなのはどうでもいいことですよ。
いじめられる性格だというのも、それはそれでいいんです。
若者が何か不満を言ってくる場合、わたしの反応は決まっています。「よかったんじゃない」と。
ある子がいて、高校の時から勉強より女の子と友達になりたい、というだけ。
何やっても女の子と仲良くすることを狙ってやっています。それで何やっても失敗する(笑) 今は大学生ですけど。
勉強しないでいいかげんなことをやって、人生がダメになってくると、これはちょっと(アドバイス)と、「女の子が多い授業があるでしょう。クラブがあるでしょう」と。本人は「そうだ、そうだ」とそれで頑張る。結局、そうやってなんとなく能力が身についていくんです。それでわたしが「(女の子と)うまく行ったの?」と聞くと「ダメですね」と。
そのうちやっと彼女ができましたが、若い子の付き合いだから長持ちするわけじゃないし。(別れて)すごくショックを受けちゃってね。どん底になったところで、わたしに連絡が来る。うまく行っているときは全然連絡がないんです(笑)
これでもう、鬼になっちゃって。精神的にすごく参っちゃって、わたしのところへ来る。
わたしは「そうかそうか、よかったね」と。
それから、「お前は一人前の男になっていないでしょう。女の子はそうじゃない。世界は女のものですよ、子供を育てるんだからね。だらしない男は選ばれませんよ。いくらカッコつけても。いくらカッコ悪くてダサくても、女の子は一人前の男に惹かれますよ。それを女の子に文句言ってもしょうがないんだ。本能でやってますから。だから一人前の男になることを考えてください。そうすれば女の子はいっぱい寄ってきますよ。頑張らなくても」
それで今は、(彼は)頑張っています(爆笑)
もうすぐ社会人になるので、そのために(就活など)頑張っていますが、本人の狙いは別です(爆笑)
だから、育て方なんですよ。
わたしは業の法則を知っていますから、適齢になれば何かが(結果が)ついてきますよ。そんなに、14歳から苦労しなくても(笑)
しかし、生まれた人間は一人前に成長しなくちゃいけない。だからその子にはその課題がついているんです。
皆様の社会では、何とかして誰かを紹介してあげたりとかそんなところです。
わたしも考えることは考えました。「あいつは一人ではちゃんとできないから、誰か付いていた方がいいから、誰か紹介してあげてもいいんだけど……。やっぱりだめだこれは」と思って。それで、紹介しなかったんです。
仏教的に世の中見れば、ものすごく幸福な世界が現れてきます。
適齢になったから誰かを紹介してあげる、とか、暗い性格だから明るくしてあげる、とか、ダメです、そんなのは。
全部宿題です。課題です。他人に何もすることはできません。本人が試験を受けなくちゃいけないんです。
わたしが言ったことの裏にある論理はそれなんです。
わたしはいい加減なことを言ったように聞こえたかもしれませんが、仏教にいい加減はないんです。
それが面白いでしょう。すごい論理があって、知識があって、なのに答えを聞いたらすごくバカバカしくていい加減に聞こえるでしょう。「スマナサーラ」は、わざとそういうふうに話すんです。
今質問に出た子が、ちょっと皮膚を厚くすればいいだけです。自分の性格を変える必要はないんです。
社会とコンタクトする際に触れる皮膚を厚くする。跳ね返るように。何か嫌なことを言われても、耳のところで跳ね返す能力を持つ。
親戚の場合は、おじさんが姪に言う場合は、わたしが言った通りに言えばいいんです。
「お前は小さい時から暗くてね。直そうと思ったんだけど、無理ですね。それでいいや、もう。われわれにとってかわいい姪だ。暗くていいや。
しかし、その性格でどう生きるべきかと、考えてください。」
(お釈迦様が伝え残したアングリマーラ長老のパワー【性格は直せるか(5)最終回】に続く)
(関西定例瞑想会 2009.04.19
http://www.voiceblog.jp/sandarepo/841826.html 音声ファイル・下から2番目と3番目からメモしました)
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それは当たり前の問題なんですね。解決する方法は、「自分を害する人まで心配できる『自分』がものすごい人格者だ」と発見することなんです。
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