(五戒とお酒(4)ストレス発散法なのでは?より続きます)
それで、五戒の三番目ね。邪な行為をしない、と言うのがあるんですね。
パーリ語では、カーメース(Kamesu)と言う言葉で、これは「五欲」なんです。*1
後で、注釈的にお釈迦様もカーメースを「邪な行為」としていますが、専門的に説明する場合は「五欲」にしているんです。五欲と言うのは、眼耳鼻舌身から受ける快楽です。快楽を得る対象は欲と言うんです。
ですから目でいろんなものが見える、音が耳に触れるんですけど、「聞きたい」という気持ちが起こる。それは快楽を、楽しみを与えてくれるからです。それがわれわれの感情を掻き立てる。
例えば、どんなものにも味があります。でもどれも欲しい味ではないでしょう。ティッシュにも味がありますけど、また欲しいというものではないでしょ。「美味しい、この味が欲しい」と思う味があるんですね。それが心の中で感情を掻き立てるんですね。
音楽を聴いて、それで美しいと止まらないんですね。そこを通してあらゆる感情を作ります。わたしが音楽を聴く場合は、音だけにします。音だけ耳に受取って、感情を掻き立てることはないんです。
で、そういうふうに五欲がありまして、体に何でも触ったら分かります。でも、「この感覚なら良い」というのがあるんですよ。
そこで感情を掻き立てられるとどうなるかというと、依存しちゃうんです。感情のために。
そこはリミットでやめてちょうだい、なんです。見て楽しむなよではなく、感情が現れたんだけど、それはそれです、とカットしなきゃあかんです。「もっと欲しい!」となるとちょっと危険。
あらゆる欲に対してリミットを守ってください。そのために常識を破らないでください。分かりやすく言うと、結婚したら夫婦関係は常識で、かわいいと思ったらどんな女も追っかけて行っちゃうと、非常識で病気ということになるのでやめてください、という説明で、(五戒の中で)分かりやすくなっています。
しかし正式には五欲には五つ入っているんです。そういうふうにわれわれは、心清らかにしていきます。
酒の場合は、答えは依存症なんです。
五戒の五つすべても、依存症の恐れがあるんですよ。殺すこともどんどんヘッチャラになっていくんです。殺すことが楽しくなる。殺し屋の映画とかあるでしょう。その中で殺し屋は殺して楽しみます。殺さずにいられないという問題になってくる。映画作る人々もそれなりに世の中のデータを調べて作るんです。
殺すことも、最初はすごくショックなんですけど、それから何度もやっていると何のことなくやってします。
盗みも依存症になります。一回うまく行くとその快感を忘れられなくて、もう一回やりたくなってしまう。邪な行為も、嘘も同じなんですよ
嘘をついてうまく行ったら、「うまくだませた!」という気持ちになっちゃって、「この人もだましてやるぞ、あの人もだましてやるぞ」ということになってしまう。嘘をつくことが正しいことだということになって、病気になるんです。
そういう実際のデータを、わたしは結構持っています。
酒も同じく、やめられなくなるんですね。脳が機能低下することが快楽と判断してしまうんです。正しい快楽はそうじゃないんです。本当は。脳が落ち着いて失敗しないで行動できたら、脳がすごく喜びを感じます。その快楽は、脳と体の細胞にとって薬になります。
詳しいことは脳についての本を読んでみてください。どんな物質が薬になるかと書いてあります。エンドロフィンとかいろいろありますね。
脳が健康だから、そういうものを出す場合は問題がないんです。脳を侵しちゃうと出てくるのは体を壊す物質なんですね。
快楽だと勘違いして依存する。
五戒も依存症の危険がある項目なんです。
依存がなぜ悪いかと言うと、依存は自立の反対です。
仏教の解脱の意味はなんですかね? 完全たる自由なんです。完全たる自由を目指すならば、依存は一番敵なんですね。
そういういろんな側面でこの質問には答えられます。
強引に酒をやめなさいと言っているわけじゃないんです。やめるかどうかは個人が決めることです。その判断を助けてあげるのがブッダの仕事です。ブッダがいないんだからその代りをやっているんです。判断するためにはデータが必要でしょ。仏教はこのデータを与えているんです。
(おわり)
初回から読む⇒・五戒とお酒(1)適量ならいいですか?
(東京・法話と実践会 2015.05.10
http://www.ustream.tv/recorded/62088084 よりメモしました)
関連エントリ:
たばこを吸う人は、依存症だから、やめられないんですね。依存症になった人は周りのことを判断する能力はない。病気なんですね。我々は病気の人を許すでしょ。病気の人が吐いてしまう。トイレに行ってなんで吐かないのですかとは言わないでしょ。心配して「大丈夫ですか」と言うでしょう。
五戒は人間バージョン、十善十悪は生命バージョンなんですね。
すべての「説法めも」を読むには:
*1:
「キンパッカの果実の話」
http://www.j-theravada.net/jataka/jataka-0201.html
お釈迦さまは、「比丘よ、五欲は、享楽しているそのときには気持ちのよいものですが、しかしそれらを享受した結果、地獄などの苦しい境遇に陥るもとになります。だから、それはキンパッカの果実を賞味するようなものです。キンパッカの果実は、色・香り・味ともに良いのですが、食べると内臓が破れて、命を失ってしまいます。以前に多くの人々がその害毒を知らずに、色・香り・味に惑わされ、この果実を食べて命を失ってしまったのです」と言われて、過去のことを話されました。