朝9:30~16:00くらいまでの、3日間連続の講習で、講師はアラナ精舎の木岡さん。
今回、一緒に講習を受けたのは男性1名、女性2名の計3名でした。わたし以外の方は、講習会の間、精舎に宿泊していました。食事別で一泊1,000円だそうで、往復の交通費を考えるとかなり割安です。
勉強する前に、まずはお釈迦様にご挨拶。
精舎のダイニング・ルームで講習開始。
パーリ語辞典、文法書2冊、パーリ語文法ノート2冊(木岡さんオリジナル)を使用しました。
わたしたち3人は皆、初めてパーリ語を学ぶので、辞書の引き方から教えてもらいました。辞書はABC順じゃないんですよ。あいうえお(AIUEO)順ですよ。しかもそれ以降は、独特の順番で、慣れないうちは苦戦しました。
そこで、インデックスを付けてみたり。
辞書、文法書、文法ノートを駆使しながら、丁寧に教えてもらいました。
お昼ご飯は、精舎からバス通りまで行き、坂を上って600mくらいの場所にあるコンビニ・サークルKでお弁当を購入。
長距離バスで当日早朝に大阪に着いたと言うマドモアゼルは、「眠いー眠いー」と言いつつも、頑張っていました。
「この講習、ガチですね」とマドモアゼル。「あんまり深く考えないで申し込んだけど……」
「いいんじゃないですか」と、わたし。逆に、それにもかかわらず、超距離バスに乗っちゃうのが素晴らしいっていうか。
もう一人の受講生のムッシューに、どうしてパーリ語を学ぼうと思ったのか聞いてみたところ、
「仕事のこととかで妄想するなら、パーリ語のことを妄想したほうがまだマシなんじゃないかと思って」と。
なるほど。なんか共感。
確かに、パーリ語を辞書で引いて、「名詞なのか・名詞ならば男性名詞か・数は・主格か対格かまたは…」と分解してから意味を訳していく作業は、パズルゲームのような側面がありますね。手持ち無沙汰なときに頭でパーリ語パズルを解いていくのはなかなか面白い。頭の体操・ボケ防止にもいいかもしれない。ナンプレ本を買ってやっている父に勧めたいところです。
もちろん、冥想のときはあらゆる妄想から離れていかなければいけませんが。
ちなみに、わたしがパーリ語を勉強しようと思ったのは、日常読誦経典の意味を単語からわかりたかったから。カタカナの羅列という認識から変化させたかったんです。
さて、パーリ語文法で、「どっひゃーっ」となったハイライトを。
さっきも少し触れましたが、パーリ語は、名詞と形容詞に性別があり、語尾の変化によって意味が変わります。それは固有名詞も例外ではなく、名前もまた変化するんです。
Ānanda(アーナンダ尊者)は、「アーナンダよ」という呼びかけの言葉で、主格として「アーナンダは」というときは、Ānando(アーナンドー)となるから、まるで別人みたい。
たとえば、Cikā(ちかー)という女性名だったら、呼びかけるときは「Cike(ちけー)」です。呼ばれても、「誰? え、わたし?」という感じですね。
面白い!!
パーリ語で、現代タイ語の単語として使われている言葉もいくつか見つけました。
たとえば、 āyu(寿、寿命)はタイ語でも同じ音で「อายุ」と書き、年齢を意味します。
suṇa(犬)はタイ語もやはり似ている音の「สุนัข(スナック)」で、これは主に書き言葉やあらたまった場所で使う言葉です。日常的には「犬」は、「หมา(ま^あ)」と言います。「ま」と「あ」の間の伸ばす音が、上がって下がります。日本語にはない音の出し方で、日本語表記すれば同じ「マー」なのに、「マー」は音の出し方を変えると、タイ語では他に「馬」とか「来る」とかの意味になり、ややこしいですね。なので、もしかしたらパーリ語と似ているほうの「สุนัข(スナック)」と言ったほうが通じやすいかもしれません。
おお、現代でもパーリ語が使えるじゃないですか!
「สุนัข(スナック)」で思い出しましたが、タイのある地方の家庭料理で肉野菜炒めがありました。「この肉はなに?」と聞いたところ、「スナ」との答え。(クはkuの母音uがない発音なので「スナ」と聞こえやすい)
当時のわたしの頭の辞書に「スナ」はなかったので、まあいいか、と思って食べました。
そこへ友人のインド人が来て、「それ、食べたの?!」ということになり、真相がわかりました。
パーリ語をちょっと勉強しただけでも、タイ語とのつながりを感じられるので、ほかの東南アジア言語にも影響がたくさんあるんでしょうね。そういう国の人々にはパーリ語って親近感湧くんだろうな。
また、パーリ語はヨーロッパ言語にもつながっていると感じます。たとえば、名詞・形容詞に性別があるところ、語尾変化で数や性別がわかるところ、否定形aが単語の前につくところ、主語がなくても主格がわかる(私なのか、あなたなのか、彼らなのか)などなど。単語一つに情報量が多くて、あいまいさをできるだけ回避しようとする、合理的な特徴が共通していると思います。
こうしてみていくと、インド発祥の言語が東西にザァーッと広がっていく様子が浮かび上がってきますね。
パーリ語を通して地球規模のうねりを感じる。
言語に乗って仏教の教えも広がっていったんでしょうね。東(アジア)では今も色濃く残り、西では地中深く埋まってしまったのかもしれません。
3日間の「ガチな」パーリ語講習も無事終了。
再びお釈迦様の前へ行き、この功徳を生きているすべてのものに回向しました。
Sabbe sattā bhavantu sukhitattā.
【パーリ語講習(アラナ精舎)のインフォメーション】
使用テキスト:
- 吉元信行「原始仏教聖典 パーリ語入門」文栄堂書店、2006年、1,200円(税別)
- 木岡さんオリジナル「パーリ語文法ノート」2007年、非売品(たぶん)
- 木岡さんオリジナル「パーリ語文法ノート 補(Ver1.0)、非売品(おそらく)
費用:
9,000円(書籍代。上記テキストを全部購入する場合)
開催日程は日本テーラワーダ仏教協会HPのグーグルカレンダーからチェック:
(予定表の日程と合わなくても 、木岡さんに電話して、日程調整の相談に乗っていただけます)
初心者講習は、3日間がベストとのことですが、連続3日でなくてもよいし、短縮することもできるそうです。それぞれのペースに合わせてやっていけますね。
アクセス:
最寄りのバス停、「流木」。ながれぎ、と読みます。JR東岸和田駅からバス停2つ、片道170円でした。
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