ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

ブックレビュー「ブッダは真理を語る: テーラワーダ仏教の真理観とその変容」

 今回書いたブックレビューはこちらの本。

 

仏教を学び始めたとき、多種多様な宗派や教えに少なからず戸惑う人は多いのではないでしょうか。

最初の章「ブッダの言葉とは」に、誰でも感じるであろうその戸惑いを、簡単にほどいてくれる箇所がありました。その部分を引用します。

「仏教が世に現れて以来、二千五百五十余年にわたって、たくさんの人々が(大乗)経典を書いてみたり、論書をまとめたり、注釈書を作ったり、その時代の要求に応じて解説したりと試みてきました。その素晴らしい業績のお陰で仏教は、欲望と無知に陥っているこの地球から消え去ることはなかったのです。ブッダの教えを分かりやすく伝えてきた知識人や学僧たちの業績は偉大ですが、彼らにブッダが説かれた元の教えより優れたことは語れなかったことも事実です。

 

仏教の世界でよく見られる現象は、ブッダの説かれた教えの一部を徹底的に開発して、一つの学派、一つの宗派を創設することです。

  

互い違いに教えを語る宗派が仏教のなかで増えていくと、困るのは一般の方々です。ブッダの教えとして誰の教えが正しいかとわからなくなって、仏教を信じることができなくなるのです。

 

 私たちがブッダの元の教えを学ぶなら、仏教に対するさまざまな疑問が解けるのです。(中略)幸いなことに、ブッダの語られた教えは、ほぼオリジナルな形でパーリ語で残されています。パーリ語で書かれた元の仏説を現代日本語で読むことができるわれわれ現代人は、たいへん恵まれていると思います。」

 
確かに、複雑に分かれた宗派を前に、一般の私たちは困っていましたよね。

今も困惑中の方がいるかもしれません。限られた時間の中で、確実にブッダの真理に出会うことが急がれます。

二番目の章「ブッダは真理を語る ~テーラワーダ仏教の真理観とその変容~」の最後の部分、タイトル「テーラワーダと大乗の運命」のなかで、

テーラワーダ仏教大乗仏教というのではなく、テーラワーダ文化・大乗文化と呼びましょう、という提言があります。

西洋文化・東洋文化という違いがあるように「文化同士で争ってはならない」という意味だそうです。テーラワーダ文化も大乗文化も、お釈迦様の真理の教えが「心臓」であり、それは平和を語り差別を否定する教えです。その真理に立ち返って、一緒に努力しよう、とスマナサーラ長老は読む人すべてに語りかけています。

これは僧侶ではない一般の私たちにとって、実は内心願っていたことではないでしょうか。

宗派を超えてどこでも、ブッダの真理を学ぶことができたら、人生の迷い道はかなりショートカットされるはずです。また、私たちとしても、大乗やテーラワーダという「文化」で優劣を判断せずに、謙虚な姿勢でブッダの教えに耳を傾ける努力をしていかなければならないなと思いました。

 

 

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