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ブックレビュー「フランス人ママ記者、東京で子育てをする」西村・プぺ・カリン著、石田みゆ訳

  この本は、日本の女性の現状を心配した著者が、すべての日本人への激励と親愛を込めたラブレターだと思う。

(よく見たら、表紙もエアメールと似た縁取りがデザインされている!)

フランス人ママ記者、東京で子育てする

フランス人ママ記者、東京で子育てする

 

 

 著者はAFP通信の記者で一児の母でもある。夫は漫画家のじゃんぽ~る西氏。本書では、著者自身の日本での生活・仕事・妊娠・出産・子育て・家族について、フランスの実情と対比させながら書かれている。

 

 「女性が妊娠出産・仕事をするなら、日本とフランスのどちらがいいか?」

この質問には、「当然フランスに軍配が上がるんでしょ」と多くの人が予想するだろう。しかし著者の意見は必ずしもそうじゃない。日本のよいところを見つけ出し、列挙し、保育園に至っては日本のほうが手厚いという。そうした温かい著者の視点から、少しずつ日本の出産や子育ての問題点が浮き上がってくる。

読み進めていくうちに、読者は、著者を日本人のよき理解者だと感じはじめるかもしれない。その著者の言葉は、素直に耳に届くだろう。

 

「おわりに」で、著者はこう提言している。

「もし、日本がフランスをマネするとすれば、それは政策ではなく、(お互いの状況を心配しあう職場などの)人間関係のゆるやかな環境だと思う。」

さらに、

「子どもを作るのは他人の命令や社会の義務ではなく、愛とお互いの信頼の上のカップルの選択」「生まれた子どもを育てるのは親だけではなく社会の責任」

と結んでいる。

 

この提言には大いに賛成だ。

ただ、問題の本質はもっと根深いところにあると私は思っている。実は本書のなかにも、それに触れた個所がある。次の部分だ。

「日本在住のフランス人たちからもコメントがあった。ある人は、『ぜひ現状を見に来てもらいたい。日本の家庭では、女性が実権を握っている。それなのに彼女たちときたら、勤めに行きたがらないんだ』と、一喝。(P153)」

 

著者をはじめ多くの人が、日本の女性の社会進出を後押ししようとしているが、当の本人たちは必ずしもそれを望んでいない事実もまたあるということだ。ここがこの社会(だけではないかもしれないが)の、忘れてはならないポイントだと思う。

 

そういう内情にかかわらず、これからの経済状況では、女性がいつまでも家庭に留まることは難しくなるだろう。嫌かもしれないけれど、私たちは(これまで以上に)社会のなかに出ていかざるをえない。そこは、今まで自ら開墾する人が少なく、ほったらかしで荒れた土地が広がっている。

さて、どうやって耕すか。

 

また同時に、自分たち自身が抱えている固定概念を変える必要がでてくるだろう。古い考えに凝り固まっているのは、実は「会社のお偉いさんたち」だけではないかもしれない。

 

 そのうえで、ポジティブで明るくてちょっと日本びいきな著者のアドバイスを、もう一度聞きたいなと思う。

 

 

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