(この記事は、スマナサーラ長老によるパーリ経典講義「相応部六処篇2受相応2独坐品独坐経」
http://gotami.j-theravada.net/2010/06/ustreamdhammacast.html
を聞いて書きました)
わたしが初心者に冥想を教える場合は、一つのポイントを説明したりします。「生きていることは、まぎれもなく苦である」と。それは、ちょっと怖い言葉なんです。なぜかと言うと、お釈迦様は決してこういう極論は語りませんし、真理を完全に語りますから、わたしたちがしゃべると仏教はダメージを受けるんですね。
「生きることはまぎれもなく苦」と言ったら、正真正銘の悲観論になりますね。しかし、お釈迦様は、そうおっしゃりながらこういうんですね。「ま、生きることっていうのが完全に、完璧に苦であるならば、人間は、生きることに執着いないだろう。そんなに必死に生きようとしないだろう」と。
世の中を見ると、みんな、生きることにすごく執着しているんだから、生きることが完全に・極限に苦だったらね、嫌になるのは当たり前なんです。ですから、また、逆に言うんですね。「生きることが完全に幸福で、楽しみであるならば、誰一人として生きることを諦める人はいませんよ」と。
ですから、生きることに諦めちゃって、解脱を目指して生きる人もいますね。そこで、社会の現状・人間の行動パターンをみて、完全に苦ということを教えませんし、完全に楽ということも教えません。楽観主義も悲観主義も極論であるんですね。にもかかわらず、わたしは、生きることは苦以外何でもないんだよ、とすごく説明するんですね、時間をかけて。
それは冥想指導するときだけ言う言葉で、わたしにもいくらかの狙いというものがありましてね、修行に対して、心構え・意欲を引き起こさないと。冥想に来る方々は悩みを抱えてきていて、昔と違って、生命力はマイナス八十くらいで、どうにもならんです。冥想できるのは生命力にあふれている人々なんですね。生きることは苦であると分かっても、何とか探さなくちゃという探求心が旺盛で、真理は何やと絶え間なく探す、力いっぱい元気な人にしか冥想はできないんです。
だからといって、冥想に来る方々を「あんたダメ、あんたもダメ」と切り捨てちゃうとね、なんも役に立たなくなっちゃいますから。ダメで元々と、わかってはいるんですけど、一応、意欲を引き起こして、生命力を・やる気を引き起こして、人間としてのプライドの錆を全部落として、ピカピカにして、それから修行を頑張ってみましょうということで、そういう下準備ですね、ほとんどやっているのは。リハーサルにも届いていないんですね。会場を選んだり、どんな演目にしようかなと言っている段階です。
ですから、生きることは苦であるというのはね、わたしはよく言うんですが、お釈迦様は完全に苦でもないとか、完全に楽でもないとおっしゃっても、お釈迦様が発見した第一真理というのは、苦聖諦(くしょうたい)というんですから、生きることは苦しみであるということになっているし。
ではお釈迦様が矛盾をおっしゃっているんですかね。そうではなくて、お釈迦様は観念的なことをしゃべらないんです。いつでも現実を、実際の人間の生き方を観察しながら、それに相違しないように、問題が起こらないようにと、いつでも現実的にどうなるのかというところを、いつでもおっしゃっているんです。
そういう態度をとったのもお釈迦様だけで、今現在、仏教活動をやっている人は、それをそんなに気にしてはいないしね。自分の宗教的なしきたり儀式をいかに派手にやるのかと、祭り好きで、現実的に生きている人間にはあまり関係ないことになっています。修行することも祭りの一つになっています。ウェーサーカを記念して修行するとか。修行というのは毎日やらなくてはいけないことでしょう。そうやって見せかけの修行を祭り気分でやっていたりする。
それはお釈迦様の立場と違いますね。お釈迦様は毎日修行する。だから、哲学的に理論ばかりを言い触らすことはしません。一応、四聖諦(ししょうたい)、苦諦(くたい)が、究極的で哲学的な答えなんですね。それは出家比丘たちにはよくおっしゃることで、在家はそんなにそういう問題は持ってこないということもあるし。
真理の中で、苦というのは四回も使っていますね。苦諦、十諦(じったい)、苦滅聖諦(くじゅうしょうたい)、苦滅道(くめつどう)なんですね。だから、dukkha(ドゥッカ・苦)、dukkha、dukkha、dukkhaと四回も使っているんですね。
わたしは現代思考を使って、生きることは苦であると、一応説明するんですね。
(生きることは感覚だ|パーリ経典講義「相応部六処篇受相応」(2) に続きます)
参考書籍:
苦の見方(サンガ新書)「生命の法則」を理解し「苦しみ」を乗り越える (サンガ新書 65)
- 作者: アルボムッレ・スマナサーラ
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