質問
「管理職になって一年になりますが、仕事がうまく回せずに悩んでいます」
回答(スマナサーラ長老)
人間っていうのは、昇格しなければあかんでしょう。
そうでなければつまらないでしょう。だからある程度で能力が上がったら、次のステップに行く。次のステップに行ったんだけど、能力がないんです。新米なんです。
だからあなたも新米なんです。
新米なのに一人前のふりをしちゃうとね。うまくいかないでしょう。
管理職にまわされて、今は新米だから、新米として学んでください。
学ぶための材料は腐るほどあるでしょう。他の人々が反対する。それでいいんです。そこであなたが管理者だから、「なぜ反対するのか。その理由はなんでしょうか」と本人に聞いて、解決すればいいでしょう。
新しい仕事に行ったということは、学ばなくてはあかんですよ。
そこの仕事が結構できそうだとなると、また他の仕事に回されますよ。
学校でも教えるのが上手な先生がいて、生徒からも他の先生からも信頼が厚いと、やっぱり校長にしてしまうんですね。クラスで教えるのは上手なんだけど、校長室で何をするのかとわからなくなっちゃうんです。
それはしようがないんですね。
ある仕事で能力を発揮できたところで、そのご褒美として評価してあげなくちゃあかんですよ。よくがんばりましたと。そのままで給料を多くあげることはできないでしょう。
だから社会からのご褒美として、学校の先生なら校長にする。
しかし本人にしてみれば、給料は上がったかもしれませんけど、大変です。
これはごく自然な流れですから、自分の能力が上がるように周りの人々から学んでください。
あなたの心配事でどうしようもないことは、先輩に聞いてみる。
それから部下にも聞いてみる。
日本の会社の反対意見と言うのはろくでもない。自分のわがままばかりなんですね。自分のことしか考えていない。おそろしいんですよ。
社会問題に反対するときでも、自分の利益だけで反対する。どこかのダムを開けるか閉めるかという裁判でも、一審では開きなさいという。二審では閉めなさいという。法律システムもとんでもない国だと思いますね。一貫していない。
だから、ダムを閉めて水を止めるべき、と言っている人々は自分の利益しか考えていない。政府の言い分は、「これまでに多額の金がかかったんだからやらなくちゃあかん」とそれだけの理由なんですね。
それで、ダムを開けることに反対する側は自分の利益だけで、すごく凶暴で、攻撃する。
だから困るんですね。
開けるべきか閉めるべきかわからないでしょう。
部下っていう連中も同じこっちゃで、自分にとって仕事量が増えるんだったら断固反対する。自分でもちょこっと苦労して調べなくちゃいけなくなったら、断固反対する。
そこを読み取って、いつでも管理者が第三の道を発見しなくちゃあかんです。
ダムを開けるべきか閉めるべきか。五分五分ですね。中間的な態度も取っていますけど。年の半分を開けて、半分を閉めてと。それも認めないんだからね。
だからもう一つ別の答えがあるはずだと思います、わたしはね。
もしかするとダムを作ったことは正解ではなくて、別の方法で、水の問題を解決するっていることができたかもしれませんし。
まあ、どちらでも楽ばっかりしたいと思っても、この人生では無理な話です。
何かやるとそれなりのメリット、デメリットはどうしてもあります。
難しい仕事を頼まれて、「やりたくない~」とそんなことを言っている場合ではないと思いますけど。
だからと言って、なんでも部下に対して「あれをやりなさい、これをやりなさい」もよくない。
特に管理の人が部下に仕事をやらせる場合は、それを自分がかなりよくできて「自分ならチョロイ」という状態でなければいけません。でなきゃあ、命令できません。
だいたいどこでもね、管理の場合に面倒くさくなるのはそういうことです。
みんなどこでもそうです。自分の利益しか考えないんです。
一応、正解という道があるならね、それを考えないといけない。
部下にただ命令しただけでもよくない。自分でも仕事をしなくちゃという意欲がなければいけなし。
仕事に意欲があるのは当たり前、と決めたらそれは勘違い。
仕事する意欲があっても、それは「気持ち」ですから、起きたり無くなったりバラバラですからね。
そこで上司の仕事は、皆の意欲が減ってくると、何とか雰囲気を作ってあげて、また意欲を作ってあげるとか。人が仕事をする気分になるには、と調べてみたり。
それは難しくない。誰だって同じですからね。
たとえば仕事がうまくいったら、やる気が生まれてくる。「この人はどうしても仕事に意欲がないな」とわかったら、簡単な仕事を頼んでみる。そうすると、嫌々ながらやってもうまくいっている。それで、ビックリして褒めてあげる。
「あなた完璧にできるんじゃない? 助かりました、これで」
といえば、もう調子に乗っているんです。それから他の仕事を頼んでも、頑張ってやってくれます。あの評価を崩したくないんです。
本人が、そこはほめ過ぎだとわかっていても、壊したくないんですよ、あのイメージを。
そういうふうにいたって単純なやり方で、人間の管理はできるんです。
上司っていうのは必ず部下を褒める、というのが第一なんです。
できるだけ叱ることは極限に減らす。
で、間違いは話し合いにする。叱るんじゃなくて。
「なんでこうなったんですかね」「これってまずいですね」
「じゃあ、どうしようかな、これは。あなたが最後までやらなきゃあかんね」「他の人に今からは頼めないね」「じゃあそういうことで、お願いします」
というふうに言えば、叱ってないでしょう。
本当は叱る必要がないんですよ、人間はね。
もし叱るときは、何か冗談でもいいんですね。
冗談を言ってバカにする。冗談だから、バカにしても相手にはそんなに「バカにされた」っていう気分はないんだからね。
だから、叱るべきときは、思う存分冗談、ユーモアを使うというね。そういうことも一つの方法です。
(おわり)
スマナサーラ長老法話・関西月例冥想会 2013.12.15
https://www.youtube.com/watch?v=4vsnfGBmmrg を聞いて書きました。
参考書籍: