<前回 生命として観る - 悲観的にみる癖をどうするか?(7)>
それでは次に、皆さま個人個人の修行の方に入ってみます。
皆様方、まず自分のこころをみてください。
みて、悪いところを発見してください。悪いところを見つける度に、自分がネガティブになります。ネガティブになって、これをなくそうとしまう。「万引きやめなさい」と言うような状況になっちゃう。それでは治りません。
具体的に言いましょうかね。
たとえば、怒りっぽい人がいる。自分が怒りっぽいと気づいたら嫌でしょう、それは。
それで、そのおこっりぽいのを失くそうとするでしょう? それで大失敗するでしょう。なぜなら、脳の中でループができているんだから。
ちょっとしたことでケンカする人がいる。
どこに行ってもケンカする。それで本人が気づく。「ああ、どこに行ってもケンカするんだから、これはあかん。今度はケンカしないようにがんばる」と思って人に会ったら、ケンカして終わっちゃいます。直らないんです。
万引きやめなさいと言っても、その人はチャンスがあったらやってしまう。
手が動くんですよ。
それで自分の修行をしてみましょう。
じぶんには、なんか嫌なところが結構ある。そこを直そうとしないでください。直らないんですよ。そちらにポジティブアプローチを入れてみる。でも皆さんのやり方じゃない。ブッダのやり方でやってください。これは脳を開発するプログラムだからね。
たとえば、すぐ怒るんだったら怒る配線ができているんだと。
だからこれがわたしの宿題です、と。
何かあったら怒ってしまうという、その怒る場面で、怒らないようにしてみてください。
やってみたら、怒りをなくす気持ちではなくて、脳の癖を直すだけ。
悪い癖だから、それだけ直すんですね。
そうすると、直ちに新しい回線がかすかにあらわれて来るんです。
本来なら簡単に怒る場面ですけど、宿題だからと今日は我慢してみようと。そこで我慢して怒らなかったら、それは脳がいまだかつてやらなかったことなんですよ。それで脳がなんか訓練しちゃうんですね。
そこで普段できないことをやるとすごく楽しいんですよ。
普段できないのに、今日はできちゃった、と。それで脳に喜びが生まれるんです。これはいいことだから、もう一回やってみる、と。
それでまた、喜びが生まれる。
「これはいい!」とまたやってみる。そうやって繰り返しやっていくと、悪い配線が壊れてくるんです。
自分が怒らない人間になろうとは思っていなかったんだけど、もう怒らなくなっています。
なんでもそういうことなんです。
たとえば、朝寝坊をする。
なかなか直らないよ、それは。しかし、自分を悲観的にみない。「朝寝坊ばっかりしてしまって、なんだこれは。今度は早く起きるぞ」とアラームをつけておいても、やっぱり体が眠くてだるくて、どうしようもないんですね。
それで、このくらいはいいんじゃない、と二度寝しちゃうんです。
その五分が三十分になっちゃう。そのときに限って熟睡する。直らないんです。
だから直る方法というのは、朝寝坊する性格が悪いんじゃなくて、これが自分の宿題ですね。宿題はやらなくちゃあかんでしょう。
夜寝る前に、「今日は宿題をちゃんとやる。宿題は楽じゃないんだから」とアラームをしっかりセットして、それが鳴ったら、眠くても「宿題だから」と起きるんですよ。
初めて朝寝坊をしないで起きられたら楽しくない? やったぞと。
そこは脳に記録されます。
そういうふうに頑張ってみる。
そういうやり方で、自分を直していくんです。
一人一人が持っている悪いところをね、悪いものだとみないで、一つ一つ宿題だとみてください。
宿題をすべていっぺんにやるんじゃなくて、一つ一つ選んで、その宿題をやる。それが終わったら、また別の宿題をみつけて、それをやってみる。そうやって脳がしっかりとできあがっちゃうんです。
そういうことで、世界をネガティブにみるんじゃなくて、ネガティブにみえるところは、わたし個人の宿題であると思って、頑張ってみてください。
わたしの話は終わりです。
《スマナサーラ長老 東京法話と実践会 2016.10.30
http://www.ustream.tv/recorded/92526227 (期間限定公開)を聞いて書きました。》
シリーズ全8回
三番目の「ありのまま」とは? - 悲観的にみる癖をどうするか?(3)