質問
「理性とは、なんですか?
辞書で調べてもイメージが湧きません。わたしは狭い世界でしか生きていないので、会社、家庭の世界でしか生きていないので、その中で理性的にするというのはどういうことになるのでしょうか?」
回答(スマナサーラ長老)
誰だって狭い世界にいるんです。
それはあまり困らなくてもいいことです。広大な世界では人間は生きられません。世界を広げたければ、慈悲の冥想をするしかない。そうすると世界が広くなります。そうでなければ誰だって、すごく小さな世界で生きています。
理性っていうのは、辞書で意味がわかるとは思いませんね。
英語では、rational という言葉ですけど、rational とは reason という言葉からきました。Reason というのは論理ですからね。これだからこうなっている、こうだからこう、と言えることですが、変なものも reason になりますしね。「原子爆弾をやっぱり落としましょう。だって、こうで、こうで、こうだから」と言うこともできてしまう。そこはあいまいな、中途半端な部分です。
難しくなるので、すぐに答えを言います。
感情で決めない。好き嫌いで決めない。客観的に、これはどうすればいいか、と決めれば十分。
人間に当てはめてみれば、わたしの好みでは決めません。子供の好みでも決めません。どちらの方法がよいのか? と決める。
それほど正しい答えが出ない、というのは構いませんよ。
どうしたって人生は不完全です。
子供がマンガを読みたがる。そうすると親が「そうだね、マンガっておもしろいね。じゃあ、こんなマンガどう? これならわたしも読みたいから」と、二人で何か役に立つテーマのマンガを読む。歴史のマンガ、人生のことを勉強できるマンガ、いろいろありますからね。そこらへんを親子で一緒に読んでみる。
「このマンガ読みたいの? はいはい、どうぞ」と言っちゃうと、子供の気持ちに乗ってしまって、これは理性ではない。
「いえ、やめなさい、そんなのは。お母さんは嫌だ、そんなマンガは。この日本の歴史のマンガを読んでください」と言っちゃうと、お母さんのわがままに乗ったことになってしまう。
そうやって、どちらの方がよいのかと考えて行動する。
「ジャガイモが食べたい!」と思って、マッシュポテトばかり食べちゃうと栄養が偏ってしまうでしょう。だからそちらに細く切ったゴボウを入れたほうがいいんじゃない? または何かサラダでも一緒に食べたほうがいいんじゃない?
それでも子供が「葉っぱは食べたくなーい! ポテトだけ食べたい!」と言って、親が「ハイハイ、わかりました」とポテトにマヨネーズをいっぱいかけちゃって、「はいどうぞ」というより、野菜を細かく刻んだり、豆も一緒に潰して入れれば、子供の意見も親の気持ちも、なんとか満足できる。
この場合、「完璧」はだめです。
わたしの意見を完璧に通してほしいというのは、これは主観でよくない。
相手の意見をそのまま通してしまうと、自分の意見はどうなる?
だから、会社でも家庭でも、みんなにとって役に立つように判断を変えることが、理性ですね、俗世間では。
今回はそこまでで説明を終わります。
ベストを尽くす、ということで理解してください。
ベストとは何ですか? わからないでしょう。ではベターとは何ですか?
ベストを尽くすという言葉があるんだけど、ベストが何かがわからない。
その場合は、自分の能力範囲で、何がベターか? というところで頑張ってみてください。
それが理性ですね。
(終わり)
《スマナサーラ長老法話 関西定例冥想会 2016.11.13
https://www.youtube.com/watch?v=FKgZ8djfv40&feature=youtu.be
を聞いて書きました》
参考外部サイト:
新年祝福法話~理性で生きることこそが吉祥です~(Dhammacast) - Theravada Online ゴータミー精舎日記
参考過去記事:
感情の起伏が激しいのをなんとかしたいのですが… - ブッダ ラボ - Buddha Laboratory
理性で生きてみようとする。「理性で生きる」というと、なんか訳が分からないんですね。理性って何かさっぱりわからないでしょう。
ひとつ裏技を教えます。
何か言う前に、なにかしゃべる前に、何かやる前に、「これでいいのか?」と、一歩下がってみてください。言いたくなったら言うんじゃないんです。しゃべりたくなったら、一歩下がってください。「これって言っていいのか?」と。
《年末アンケート実施中》
↓↓ 下記記事の一番最後にある「コメントを書く」をクリックして、今年一番こころに残った法話記事を書き込んでいただけると幸いです。↓↓
shige8940さん、松村上久郎さん、ssttさんに、さっそくお答えいただきました。ありがとうございます😊
それぞれの方に張り付けていただいたURLから、各記事を久しぶりに読み返しました。
また新たにハッとしたり、忘れていたことを諭されたり……。
自分自身も再び勉強になりました。