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Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論

「脳はいかに意識をつくるのか 脳の異常から心の謎に迫る」ゲオルク・ノルトフ著、高橋洋訳

脳はいかに意識をつくるのか 脳の異常から心の謎に迫る 

ゲオルク・ノルトフ著、高橋洋訳 白揚社 2016.11 

この本は、著書によるとこのような内容だという。 

「わたしの目的は、不健康な脳から健康な心を推論することだ。それによって、哲学者が心や脳と呼ぶものを的確に記述するために、現在の哲学的概念を変える必要があるのか、そして、その必要があるならいかにしてかがわかるだろう。本書では、精神分析医としてのわたしの臨床経験に基づいて、まず冒頭で神経系や精神の障害を抱える架空の患者の症例を紹介し、しかるのちに神経科学者として行った神経画像を用いた魅惑的な研究の成果を取り上げつつ論を進めていく。そして最後に、神経哲学者としてわたしが出会った、心と脳に関する数々の新たな理論について考察する。」(25p)

つまり、

 「簡潔に言えば、本書は「意識とは何か」を探求する哲学と、脳神経科学における最新の成果の統合を試みるきわめて野心的な書である。」(251p)

と訳者が語る、この本。

目次を見ていきましょう。

 

序章

第1章 意識の喪失――心の背後に存在する脳を探究するにはどうすればよいのか?

第2章 意識――神経活動と心の変換メカニズムとは何か?

第3章 自己――この家には誰もいないのか?

第4章 抑うつと心脳問題――精神疾患は、実のところ心の障害ではなく安静状態の障害なのか?

第5章 世界を感じる――私たちは「世界‐脳」関係をいかに経験しているのか?

第6章 統合失調症における「世界‐脳」関係の崩壊――「世界‐脳」関係が崩壊すると何が起こるのか?

第7章 アイデンティティと時間――「世界‐脳」関係はいかに構築されるのか?

 

さて、本文の中でこんな箇所があった。

 

「おのおのの場面が次の場面へとジャンプしていきます。そこには何の一貫性もありません。時間の進み方がおかしく、バラバラで、流れていかないのです。無数の独立した今、今、今が立ち現れるだけなのです。規則や秩序は存在せず、狂気の沙汰に思えます。自己に関しても同じことが言えます。一瞬一瞬、さまざまな「自己」がランダムに出現しては消えていくのです。現在の自我と過去の自我のあいだには何の結びつきもありません。」(247p)

 

上記の言葉は、統合失調症の患者が述べたことだという。

 

統合失調症患者は、正中線領域における通時的連続性に関する性質が異常な変化を被り、それによって自己と人格の通時的不連続性、すなわちアイデンティティの変化に至る。」(233p)

 

ということは、ヴィパッサナーと、この正中線領域はとくに深い繋がりがあるのかもしれない。

 

著者は最後に次のように語っている。

「わたしは、脳の持つ主観的な性質が正当に評価されるようになることを願って本書を著した。自己、意識、精神疾患などの心的特質を理解するために精神科学は主観性を取り込む必要がある」(260p)

 

もし、ここでいう主観性とは「こころの働き」のことであるならば、今後の著者の研究結果がとても楽しみだ。

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