その島のひとたちは、ひとの話をきかない 精神科医、「自殺希少地域」を行く
(森川すいめい著 青土社 2016.07)
自殺で亡くなる人が少ない地域が、日本の中にあるという。
その土地は、ほかと何が違うのか。
タイトルは「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」である。
しかし、最終章の一行目に書かれてあるのは、「自殺希少地域のひとたちは対話する」なのだ。
自殺希少地域を巡り歩いた筆者と、そこに住む人たちの会話を読んでいて、ある点に気づいた。
その土地の人たちは、相手から何かを得ようとしていない。
逆に相手に「与えよう、与えよう」という姿勢に貫かれている。
会話相手が旅行者であるからかもしれない。
しかし、それならなおさら、客である旅人からより多くの儲けを得ようというほうが一般的だろう。
実際にはその土地の人たちは、旅人の困りごとを根気強く解決し、持ち主にとって貴重なものでも相手が必要なら頓着なくあげてしまう。
どうやら自殺希少地域と呼ばれるところには、ちょっと他とは違う空気が流れているようだ。