ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

死が怖くて、じっとしていられません

質問

強迫神経症で二十年以上、薬を飲んでいます。

死が恐怖で、変わりゆくものを元に戻そうとして、自分のこころの不安を取り除こうとして、掃除などしてクタクタになるまで動いてしまいます。

死が怖いということや、じっとしていられないことに対して、どうしたらいいでしょうか?」

 

回答(スマナサーラ長老談)

 

「死」を仏教用語であらわすなら、「無常」という言葉なんです。

あなたが今まで生きてきたのは、無常だからです。食べたご飯が無常でなければ、あなたは死にますよ。おなかの中で消化できなくて。ご飯を箸で取った瞬間にも変化して、口に入れたらまた変化して、喉を通っていくときにも変化して、お腹に入って変化して、体の外へ出て行ってからも、ご飯は変化し続けている。何一つも止まっていはいないんです。

それを無常というのです。

 

真理からみれば、あなたは今も死んでいるんです。だから生きています。

ですから、あなたを生かしているエネルギーを、あなたは嫌がっているんです。

別に嫌がってもいいんだけど、それだったら解脱に達しなければあかんね。それはやらないしね。

 

あなたがおっしゃっていた、壊れたものを元に戻そうとか、そういうのはやめてください。

何一つも元に戻せません。

あなたはご自分を元に戻せる? あまり昔に戻すのではなくても、一週間くらいご自分を過去に戻せる? 一日だって元に戻せる? あなたの人生を?

 

何一つも元に戻せません。

何か壊れたら、テープを張ったりして直したりしますけど、元には戻せません。人が風邪ひいたら薬を飲みますけど、元には戻りませんよ。風邪は治りますが、体は元には戻りません。いつでも新たな命なんです。別人なんです。

 

病気になったらときどき手術をするでしょう。

患者は、「これで元に戻れる」と思うかもしれませんが、戻りませんよ。元に戻れると思ったバカが、「手術はしたんだけど、まだまだ……」と文句言うんです。手術して何か切って貼り付けようと、元に戻れるわけじゃないんです。

 

だから、いつでも新たな人生なんです。

毎日新たな人生です。新しいんです。一時間でも人生は変わっているんです。

たとえば、この法話会に来て座っているでしょう。来た時のあなたと今のあなたではもう違うでしょう。一時間前の、9時30分のあなたに戻れる? あり得ないでしょう。

 

これを憶えておいてください。

「何一つも、元に戻れません」

変化して進むだけです。

 

だからあなたは、楽しく掃除してください。

「新しい状態になったんだ」と。

過去のコンロの状態と比較しないでください。洗い場のシンクも、いくら磨いても買った時の状態ではないでしょう。わたしはやってみたことがありますよ。シンクを初めの状態のようにピカピカに磨き上げようと、CMで見た洗剤をかってきて、磨きに磨きました。それでも、「やっぱり元に戻りっこないや」と諦めたんです。

 

子供も、元に戻りません。毎日、新たな人間になる。

精神的にいつでも明るく、新たな人間として、どんなものにでも挑戦してみてください。

初めての経験というのは結構面白いんですよ。初めての外国旅行、初めて飛行機に乗った経験というのは憶えているものです。それから何回も乗っているとあまり面白くなくなっちゃうんですね。

 

よく調べれば、毎回違うということはよく見つかるはずなんです。

 

人生はいつでも新しい。

なにか面白い、という感じでやってみてください。

 

大家族だからと全部自分が責任を背負うのではなくて、管理者としてみんなにそれぞれの仕事を分けてあげてください。

大家族だったら大家族としての生活をしなければ。大家族は悪くないですよ。なぜならば、自分がやるセクションは多くないからね。自分のセクションはしっかりやる。仕事というのは分担しなくてはあかんですよ。

 

子供たちに任せた仕事が、しっかりやっていないときは、「なんでやらないのか」と調べたり、きちんと仕事をやらせるにはどうしたらいいかと工夫したり、そういうのは面白いんです。

子供が宿題をやらないで遊んでいるなら、「どうして宿題をやらないのかな」と調べて、そこら辺を管理する。

そういうふうにすれば、物事がうまくいかないことはすごくおもしろいんです。

うまくいかないから「どうすればうまくいくでしょうか」と工夫を考えたりする。

もっと面白いことは、一度使った工夫は次はもう使えないんです。新しい工夫をしなくてはいけない。

 

たとえば、子供に何か言って宿題をさせました。

次の日に同じことを言っても、子供はもう慣れてしまって動かない。

 

だから物事がうまくいかないことはいいことです。

自分が新たな方便を考えなくてはいけないんですね。一度使ったらまた新しい方便を考えなくてはいけない。

そうやって人間は生き生きして生きられます。なぜならば、すべて無常だからです。

 

あなたが無常に逆らうからすごく苦しんでいます。

あなたがやっていることは、こういうふうに憶えてください。

「わたしは地球の自転を止めようと頑張っているんだ」と。

だから苦しんでしまうことになります。

 

死を認めることは無常を認めることです。

認めなくても無常は無常です。あなたの都合で地球は自転しているわけではありません。自転を反対しても、止めようと思っても、どうすることもできません。

 

無常もそういうことで、そういうふうに、「死」という言葉ではなく「無常」という言葉に入れ替えてみてください。

入れ替えて、無常ということを土台にして生きていみてください。

 

失敗するかもしれません。

それでもまたやってみると、その経験が積み重なって、すごく明るい人生になると思います。

(終わり)

 

東京 法話と実践会 2017.04.23 よりメモしました。

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すべての生き物は死が”怖い”。

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