ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論

英国一家、インドで危機一髪 Eat, Pray, Eat

「英国一家、インドで危機一髪」マイケル・ブース著 寺西のぶ子訳 2016

を読んだ。

 

40歳を目前にして、アルコール依存症一歩手前の著者。

「40までは、人生にも経験にも『こんにちは、こんにちは、こんにちは』だけどな」つい最近その節目を過ぎたばかりの友人が、こぼしていた。「その日を迎えちまえば、あとはたいてい『さよなら、さよなら、さよなら』だ」

と、著者自らも「崩壊寸前」と語る。

 

そんな著者を心配した妻が提案する。

マンネリの生活を離れて、普段と違うことをしないと。それしか解決の手だてはないわ。

インドへ行きましょうよ。

 

「子供連れでインド? どうかしてるんじゃないか?」と僕は鼻先で笑った。

……しかし、それから半年後、一家四人はインドの地を旅することになった。

 

著者は有名なフードジャーナリストで、日本のグルメ旅行記も書いている。(英国一家、日本を食べる 亜紀書房

NHKでアニメ化されたということなので、ご存知の方も多いのではないだろうか。このインド編でも、著者としてはグルメ紀行の道をばく進したかったらしい。

 

が、夫の身を案じ、少々スピリチュアリティにはまり込んだ著者の妻はそれを許さなかった。

怪しげな占い師、カースト制を擁護するバラモン階級人との対話、貧困、贅を尽くしたホテル、下痢、さまざまな宗教家たち、ヨーガ、瞑想、そのほかたくさんのトピックスが目一杯詰め込まれている。

 

一つ、本書の中でわたしがブックマークしたのは、次の著者とヨーガの指導者ヴィネイとの会話の箇所。

ヒンドゥー教で悟りを追求する方法は」

このまま話を続ければヴィネイを怒らせるかもしれないと思いながら言った。

「僕にとって尊重しにくい部分があります。キリスト教文化で育った場合は、聖書の言葉を伝え、伝道し、ひとつの信仰体系を人に説くのが信仰の道です。だから、内省に、つまり自分自身にとても長い時間を使うのは、自己中心的で利己的に見えるんです」

 

「なるほど。でも、ヨーガにおける自我(エゴ)は、それとは違う概念なのです。(中略)」

 

「飛行機に乗っていて、酸素マスクが下りてきたとき、自分のマスクをちゃんとつけてから他人を手伝うようにと言われるみたいなものですか?」

 

よく「自分も溺れているのに、同じく溺れている他者を助けることはできない」という喩えを聞くが、この酸素マスクの例は新鮮だった。

 

さて、三か月のインドの旅は、うまく「中年の危機」から著者を軟着陸させたのか。アルコール依存症を目前にしながら、引き返すことができたのだろうか。

読者は長い旅路の果てに、ちゃんと解を得ることができる。

 

そして、おそらく予言するかもしれない。「この著者は50歳を目前にして、また自分を『解放』する旅に出るだろう」

 なぜなら、最終章「解放」を読む限り、それってほとんど「解放」されていないような。

などと、思えてしまうのだ。