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World Buddhist #6 仏教徒の米上院議員 メイジー・ヒロノ氏

日本テーラワーダ仏教協会の機関誌「パティパダー」最新号(2017年10月号)に寄稿した「World Buddhist #6 仏教徒の米上院議員 メイジー・ヒロノ氏」を、許可を得て転載します。

 

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World Buddhist #6 仏教徒の米上院議員 メイジー・ヒロノ氏

 

今年七月二十七日、アメリカ上院議会でオバマケア撤廃に反対するスピーチをして反響を呼んだのは、ハワイ州選出の上院議員メイジー・ヒロノ氏でした。(注1)

ヒロノ氏は、二〇一二年、史上初めて上院議員になった日本生まれのアジア系移民の米国人女性で、仏教徒です。「わたしが選出されたことで、上院に四倍(女性・アジア系・移民・仏教徒)の多様性をもたらすことができました」とヒロノ氏が当選後に演説しました。観衆から「でも、同性愛者ではないでしょう?」と声が上がると、「誰しも完璧ではありません」と、氏はユーモアで切り返しました。

 ヒロノ氏がオバマケア撤廃に反対して行ったスピーチは、初めから注目を浴びたわけではなかったそうです。しかし、有名ブログで取り上げられ、ヒロノ氏の言葉が「こころに響く」と人々に支持されていきました。その背景には、ヒロノ氏が現在、ステージ四の腎臓がんにもかかわらず、ハワイからワシントンDCへ飛び、スピーチを行ったこと、そして彼女自身の生い立ちにあったようです。

 

8歳で日本からハワイへ渡った

ヒロノ氏の祖父母は、ハワイで移民として暮らしていました。そして太平洋戦争が始まる前に、子供たち(のちのヒロノ氏の母親を含む)と共に日本へ戻りました。帰国後は、福島県で農業を営んで暮らしていたそうです。ヒロノ氏の母親は、福島県で獣医と結婚し、戦後、ヒロノ氏が生まれましたが、父親がギャンブル依存症で生活は苦しかったといいます。そうした中、幼い妹を肺炎で亡くし、「あのとき、適切な医療が受けられれば彼女は助かっていたかもしれない」と、ヒロノ氏はスピーチで語りました。父親がすべてを持って行って賭け事に使ってしまうので、家の中には食べ物も何もなかったそうです。そんな生活と決別するため、米国市民権を持っていた母親は、ヒロノ氏ともう一人の子供を連れ、横浜から船に乗り、ハワイへ向かいました。ハワイでも貧しい生活は続きました。母親が病気で寝込むと、給料が入らないので、食べ物がないことに直結しました。ヒロノ氏は汗だくの母の服を絞り、着替えさせ、懸命に看病したそうです。

 

飛び出す勇気

 ヒロノ氏は、「女性・アジア系・移民・仏教徒」にもかかわらず上院議員になったという、前人未到の地を歩んできました。「まわりとは違う道を進んできたのは、どうしてですか?」とインタビューで問われたヒロノ氏は、こう答えています。(注2)

「わたしの母は、いつも家族のための選択をし、実行してきました。ずいぶん後になってから、彼女がどんなに勇気があり、リスクテイカー(risk-taker)だったかを理解しました。わたしのクラスメートの女の子たちは、当時の慣例として教師や看護師になろうとしていましたが、自分は同じ道を選択しませんでした。それはやはり母の背中を見てきたからです」

一方で、それでもまだヒロノ氏は、結婚し家庭を持つという伝統的な女性の生き方を自分も送るだろうと漠然と考えていました。しかしある日、ベティ・フリーダン(著作家フェミニスト)の「新しい女性の創造」を読み、「文字通り頭の中で稲妻が光りました」。そして、「女性だからこう生きる、ではなく、わたしは本当にわたしの人生を、全く違ったものとして認識し始めたのです」と語っています。

 

仏教徒として

 浄土真宗の信徒であるヒロノ氏ですが、自身は「毎日実践を行うような仏教徒ではありません」とコメントしています。しかし、価値観は仏教の影響を受けており、「他の宗教に対する敬意と寛容があるのは仏教の特徴です」と語っています。また、あるインタビューで「好きな仏教のお祭りはなんですか」と問われて、「お盆です」と答えています。「日本では、亡くなった人たちを供養する法要ですが、ハワイでは、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が集まって、ただ踊るだけで参加できるお祭りになっています。わたしはお盆の時期、お寺で世界各国から来た人たちと会いました」。

「多様性の大切さ」は、ヒロノ氏が全身で表す強いメッセージです。日本の読者向けのインタビューで、そのことがはっきりと語られていました。(注3) 「ハワイの人々は人種や文化の多様性を歓迎し、これらはすべて日常生活の中で混ざり合っています。異人種間の結婚は典型的で、さまざまな人種が共に暮らすことは、ハワイでは当たり前です。私たちは、自分と異なる文化を理解することに価値を置いています」。

 

 ヒロノ氏が、女性として、アジア系移民として、仏教徒として、そしてがん患者として、人々の幸せを願う言動が、海を越えて多くの人のこころを動かしています。

 

 

 

注1

全米が泣いた「日系アメリカ人議員」の正体

http://toyokeizai.net/articles/-/183605?display=b

 

注2

What It’s Like To Be The Only Asian-American Woman in the U.S. Senate

A conversation with Mazie Hirono.

https://medium.com/@adriennelaf/what-its-like-to-be-the-only-asian-american-woman-in-the-u-s-senate-6d7a07e2804e

 

注3

HIRONO Featured in Japan Airlines’ in-flight magazine

https://www.hirono.senate.gov/press-releases/hirono-featured-in-japan-airlines-in-flight-magazine

 

 

 

2017年のカティナ衣法要は終了しました。

2018年は日本テーラワーダ仏教協会でカティナ衣法要は行われません。

 

カティナ衣法要のお布施リストを、個人的に作成しました。

http://amzn.to/2hCYpiF

よろしければご参考に。。。