質問
「仏教の教えは、生きとし生けるものが幸せでありますように、と言う教えでしょうか?」
回答(スマナサーラ長老)
難しいね、これを答えるのは。
仏教は生きとし生けるものが幸せでありますように、と言う目的でしょうか。よくわからないね、わたしにも。
人に解脱の道を教えることが幸せな道なんですね。
だから苦しみをなくす道を教えているんですね。
ブッダの言葉で言えば、自分が人々に苦しみがどのように現れるのか、苦しみをどのようになくすのか、と言う二つを教えているんだよと。
そこで政治的な話にすると、ブッダの教えは人々を幸せにするものだと言っても悪くないんだけど、その程度で全てを語ったことにならないんですね。
本当の幸せは解脱に達することなんです。
一時的な幸せじゃないんです。
我々が慈悲の冥想で、生きとし生けるものが幸せでありますようにと思うのは、世間的なレベルです。悩み苦しみがなく、幸せでいてくださいと。
でも、生きていくときは悩み苦しみがある。生きることは誰にだって苦しみ。だったらそうしますかと言ったら、解脱に達しなくてはいけないんですね。
そうなってくると、ブッダにしかできない仕事になるんですね。
そう言うところで、ちょっと複雑なんですね。
人類みんな幸せになってくださいと言う、キリスト教のイエス様のような言葉じゃないんです。人類を助けにきましたよと、イエズスがユダヤ人に向かって言ったような、本当はユダヤ人のことしか心配していない言葉じゃないんです。それはちょっと現実的にはありえない話でしょう。
人間はみんなどんどんより良い生き方になるように、社会的に頑張らなくてはいけない。それを頑張っても全て無常だからね。たとえ黄金時代を作っても、すぐになくなってしまいます。
そこから脱出する方法がブッダのメッセージなんです。
どこにPRを使うのか、と言うことです。
お釈迦様がおっしゃったのは、「わたしは生命に苦しみと苦しみをなくす道をずっと教えてきたんだよ」。と言うことは、我々の言葉で言えば、みんなの幸せを願っている教えだよと言うことは可能です。お釈迦様がおっしゃる幸せは解脱に達することです。これは一人でやらなくてはいけない。一人一人で。
(終わり)
東京 法話と実践会 スマナサーラ長老 2018年11月23日
動画 https://www.facebook.com/jtheravada/videos/368432943898539/
法話メモ https://twitter.com/jtba_talk/status/1065775981963567104