ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

World Buddhist #31 アーユルヴェーダ

World Buddhist #31 アーユルヴェーダ

 

インド政府の三大観光柱

 インド政府は昨年、海外からの観光客数と収入を今よりも三倍増やす目標を掲げました。その三本柱が仏教、ヨガ、アーユルヴェーダです。その三つをお金のために使おうとするのはどうかと思いますが、仏教遺跡、ヨガスタジオ、アーユルヴェーダ治療院のどれも発展し、外国人がアクセスしやすくなっています。わたしも外国人向けのアーユルヴェーダ初級コースを受講し、実際にアーユルヴェーダ治療院にも行ってみました。

 

アーユルヴェーダ治療院

 わたしが行ったのは、デリーの隣の街グルガオンにある「Kairali(カイラリ)」という治療院でした。デリーのKairaliは旅行会社を通して観光客が訪れる有名院です。グルガオンのKairaliはわたしのような在住外国人がたまに訪れる程度で、多くはインド人が来院している様子でした。

この治療院はアーユルヴェーダ医師がいると聞いていたので、あらかじめ医師の診察を予約の時に申し込んでおきました。

その時は女性医師で、体調の悪いところはないか、アレルギーはないか、大きな手術の経験はないかなどを問診した後、脈診を取り始めました。人差し指、中指、薬指を患者の右手首に当て、しばし脈を診ていました。

その後、「あなたはピッタです」とドーシャ(個人の性質・体質)を診断しました。アーユルヴェーダでは三つのタイプのドーシャ「ヴェータ、ピッタ、カパ」があり、それに沿って治療を行います。

例えば、額の一点にオイルを垂らし続けるシロダーラという療法は、ヴァータ質の人向けで、ヒルを皮膚に這わせて血を吸わせる療法はピッタ質向け、鼻からお湯を入れて口から出す療法はカパ質向けと言われています。

 

いざ施術!

 医師の診断でピッタと言われたわたしは、ハーブボール(白い布にハーブを入れて球体に結び、持ち手をつけたもの)で、オイルを肌に擦り入れながら全身を叩くという施術が行われました。アーユルヴェーダのマッサージは、オイルを体に擦り込んで毒素を外に出すという方法で行われるので、気持ちがいいというより痛いです。

オイルは荏胡麻の匂いがしました。右半身と左半身をそれぞれ一人の人が、ほぼシンクロするように施術が行われます。施術人はアーユルヴェーダが盛んな南インドのケーララ州から働きに来ていると話していました。

施術が終わると、頭から足先までオイルまみれの体をシャワーで流すように言われ、薄い大判の布を渡されました。シャワーがバケツ一杯のお湯のみ、またはそんなものはなくて当然という治療院もありますが、ここでは不足なくシャワーのお湯が出ました。それでもそのあと一日中、体全体がオイリーで荏胡麻の匂いが漂っていました。

 

お釈迦様はアーユルヴェーダ治療を受けていたのか?

 ケーララ州などにあるアーユルヴェーダ治療センターでは、短くても十日から二週間の間宿泊して治療を受ける必要があるそうです。治療院のみでなく日頃から食事、運動、精神的な管理も必要です。アーユルヴェーダの歴史は五千年以上前から続いているということなので、お釈迦様の時代にも存在していたと思われます。

お釈迦様の診察や治療を、仏弟子であったジーヴァカという医師が行なったと言われていますが、その治療法が実際にはどんなものであったのかということは伝えられていません。

アーユルヴェーダは仏教と同じく、インドよりスリランカの方が正しく伝承されているという見方もあります。確かに実際、インドで治療院に行ったり話を聞いたりすると、すでに医療行為ではなく単なるカジュアルなマッサージ店と表現した方がいいような所もあるようです。

インドの人々も、病気になればまず頼るのは西洋医学の病院で、アーユルヴェーダ治療院へ行くのは、日本でいう整体院に通うようなケースが多いと感じています。それでも、西洋医学の限界を何かのきっかけで体験した人々が、アーユルヴェーダを学ぶ例は少なくないようです。

(了)

 

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「World Buddhist #31 アーユルヴェーダ」は、日本テーラワーダ仏教協会の月刊誌「パティパダー」にて連載中です。

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