ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

World Buddhist #27 インドのウェーサーカと、SNSと、北東部の人々と。

World Buddhist #27 

インドのウェーサーカと、SNSと、北東部の人々と。

 

インドのウェーサーカ

 五月十八日は、インドで釈尊生誕日として祝日でした。

祝日というものの、インドの仏教徒は人口の一パーセントと言われています。デリー首都圏では、お祝いごとをしている様子は見かけませんでした。この日にわたしが訪れたジャイプルでも、特にお祝いの気配はなし、でした。

ちなみにジャイプルは、デリーから南西に約二百六十キロ下ったところにある、ラジャスターン州の州都です。歴史的な観光スポットがあるばかりでなく、インド全土で有名なテキスタイルや服飾メーカーの本店や、インドらしいデザインの宝飾店が軒を連ねていることでも有名です。デリーから日帰りで行って来られる都市なので、インド旅行の際に日数に余裕があれば、お勧めしたい旅先です。

 

今回訪れたジャイプルの老舗宝飾店では、友人が水晶でガネーシャを彫り込んだ小さな置物を買っていました。わたしは仏像がないかと探しましたが、良いものには出会えませんでした。ヒンドゥー教の神々、特にガネーシャの置物やジュエリーはどの宝飾店でも種類が豊富ですが、仏像となるとなかなか難しいのです。ガネーシャは、富を引き寄せる神様として人気が高く、またガネーシャを持っていると再びインドを訪れることになると信じられていて、インド好きな外国人にも好まれます。

 

一方で仏像を探すなら、仏跡近くの店舗か、バッグパッカーもよく訪れるオールドデリーの土産物店の方が良いかもしれません。オールドデリーでは、大理石を一つ一つ彫った仏像が、ほんの数百ルピーで売られていることもありました。インドで仏像を扱っている場所を考えてみると、外国人客相手の土産物店か、インテリアとしての仏像を置く店が多いような気がします。

 

インドのSNS

 今年インドのブッダ生誕日に唯一、わたしがウェーサーカを感じたのは、通いのお手伝いさんから来たSNSのメッセージでした。お手伝いさんからのウェーサーカのメッセージは、WhatsApp(ワッツアップ)というメッセージアプリを使って届きました。

インド社会では、このアプリをメッセージのやり取りに使うことが非常に多いです。インド国内の電話番号をスマートフォンの連絡先に登録すると、少し時間をおき、自動的にWhatsAppとしての連絡先が表示されます。

電話番号とこのアプリが紐づけられていて、簡単に、メッセージをやり取りし始めることができるのです。電話番号と紐づけられたものにショートメッセージもありますが、これは一つのメッセージごとに料金が発生するので、あまり個人間のやりとりで使われません。

インドでインターネットを使う人の九割以上がFacebookを使っているというデータがありますが、FacebookのメッセージアプリであるMessengerを使っている人は六割程度だそうです。実際にわたしも、インド人とのやりとりはWhatsAppのみで、日本人とのやりとりではLINEが多く、時々Messengerを使う場合もあります。

 

インド北東部の人々

ウェーサーカのメッセージを送って来てくれたお手伝いさんは、ダージリン州出身で、ネパール語を話すヒンドゥー教徒です。

彼女が送って来てくれたメッセージは、お釈迦様のイラストに「Happy Buddha Purnima!」とブッダ生誕日を祝う言葉が並んでいます。この画像は、同じ故郷の仏教徒の友達から送られて来たもので、それをわたしに転送してくれたそうです。彼女の友達には仏教徒キリスト教徒も、もちろんヒンドゥー教徒もいて、「皆ミックスで、仲良くしていますよ」ということです。

 

ダージリンから北東側のアッサム州をはじめとした州は、ネパール、ブータン、中国、ミャンマーに接しているので顔立ちが東アジア人系の人がとても多いのです。デリー首都圏に働きに来ている人々も多く、アッサム州出身の運転手さんはブータンがとても好きで、帰省すると仲間たちとブータンへよく行くそうです。その運転手さんによると、ビザの問題はないそうです。彼もヒンドゥー教徒で、早くお金を貯めて結婚したいそうですが、結婚相手はインド北東部の可愛い人ならヒンドゥー教徒でもキリスト教徒でも仏教徒でも構わない、と嬉しそうに話しました。

 

その運転手さんは「次の生まれで日本に行きたい」とも話していましたが、「来世で」と必ず付け加えるところが印象的でした。今どう頑張っても日本に行くことはできないと思っているのでしょうか。

ちなみに二十年前のタイでも、タイ人の友人たちは「いつか日本に行きたい」と言っていました。二十年経った今、ほとんどの友人はそれを実現しました。

二十年前は、今のアッサム州出身の運転手さんとほぼ同額のお給料だった友人たちでした。

今後二十年で、インドも目覚ましい経済発展をするでしょう。その時、その運転手さんもかつてのタイ人の友人のように、日本(あるいは他のいわゆる先進国)に行くことができるのでしょうか。

(終わり)

 

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「World Buddhist 」は、日本テーラワーダ仏教協会の月刊誌「パティパダー」にて連載中です。

 

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