ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

World Buddhist #34 アフガニスタン

World Buddhist #34

アフガニスタン

 

 昨年十二月にアフガニスタンで銃撃されて殺害された医師・中村哲さんのお別れ会が福岡県で開かれたのと同じ日に、インド・ニューデリーではアフガニスタンの現在を学ぶセミナーがありました。アフガニスタンの首都カブールには、デリーから日に3便が就航していて、僅か2時間の距離だそうです。さらに、デリーにはアフガニスタン人が数万人規模で居住していて、ラージパト・ナガルという地域には「リトル・カブール」と呼ばれているアフガニスタン人コミュニティもあります。

今回のセミナー講師はJICA職員の方で、アフガニスタンでの暮らしぶりや食生活をはじめ、中村医師の活動や殺害された後の街の様子などが紹介されました。中村医師を偲んで飛行機の翼や街なかの白い壁に医師の似顔絵が大きく描かれ、桜や梅のような花も背景に描かれていました。アフガニスタンでは爆風を避けるために、街の中にいくつもの大きな白い壁があるそうです。その無機質な壁に中村医師の顔や花々が描かれたことで、アフガニスタンの人々の心を慰めたのではないかと思います。

一方で、現地の人々に医療を施し、荒れた土地に水路を作る活動をしていた中村医師を殺害するまでに至った反対派の人々も存在しているのが現実です。今もアフガニスタンには、女性が社会に出たり、まして警察官になったりすることを反対する人々も多くいるそうです。例えば、アフガニスタンの女性が性差別を受けていることを訴えるウェブサイトはサイバーアタックの標的にされることも珍しくないということです。そんな中、JICAではホームページ上にアフガニスタンの女性警察官をテーマにした漫画を公開しています。

 

アフガニスタンで警察官になった女性たち」というタイトルの漫画は、次のように紹介されています。「現在もその多くが、差別や暴力と闘っているアフガニスタンの女性たち。その中に、信じられないような悲惨な状況下においても、強い意志を失わず、警察官になった人々がいます。」JICAでこのようなウェブページが妨害にあわずにいられるのは、日本語だからという理由もあるそうです。サイバーアタックを仕掛ける側が日本語を読めないので、無事に公開し続けられるのだということです。

漫画の中では、アフガニスタンの女性警察官の五割近くが過去に暴力被害に遭っていると書かれています。またアフガニスタンではレイプされても、加害男性ではなく被害を受けた女性側が非難されたり、罪に問われたりすることが多いのだそうです。日本では被害女性が有罪判決を受けることこそありませんが、アフガニスタンと同じように女性の方が批判の対象になったり被害を口外しないように圧力をかけられたりするケースをしばしば耳にします。記憶に新しいところでは、2017年にジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者山口敬之氏から性的暴行を受けたとして実名でカメラの前に顔を出し、被害を告白しましたが、被害者の伊藤さんが逆にバッシングを受けるという事態になりました。

そんな日本の女性警察官比率は、6.9パーセントで世界的に見ても少ないようです(国連薬物犯罪事務所、2012年)。インドは5.76パーセントでさらに低くなっています。世界で一番女性警察官が多いのはラトビアで34パーセント。スウェーデンが29パーセント、イギリスが27パーセントです。このデータとは別の調査では、タイの女性警官比率は約8パーセントと言われています。そのほかの仏教国であるミャンマースリランカのデータは見つかりませんでした。もちろん女性警察官はそれらの国にもいるはずですが上位に来るほど多くはないのでしょう。

 

  • かつて“東洋のパリ”と呼ばれた国

 アフガニスタンを学ぶセミナーで、1970年頃のアフガニスタンの写真を見ました。ヨーロッパ風の花壇がある通りで、洋装の男女が写っていました。その写真だけを見たら、ヨーロッパのどこかの街の風景だと思ったでしょう。同じ場所の今を写した写真は、土埃が立つ舗装もされていない道路でした。花壇もなく、人々もいません。ただ道だけが同じ場所にありました。1970年頃のアフガニスタンは、東洋のパリと呼ばれるほど「イケている」国だったそうです。雑誌ヴォーグでも、当時のアフガニスタンが舞台に選ばれた特集記事がありました。同じ頃の日本はというと、よく紹介される写真は、オイルショックでトイレットペーパーをスーパーで我先に取ろうとするものを何度も見たことがあると思います。

東洋のパリと言われたアフガニスタンは、冷戦時代やタリバンの台頭によって荒廃していきました。2001年には、首都カブールから230キロのところにある、バーミヤンの仏教遺跡がタリバンによって爆破されました。もともとこの地に住んでいた仏教徒は、11世紀にはイスラム教徒によって追い出されていたと考えられています。

(了)

 

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この「World Buddhist #34 アフガニスタン」はテーラワーダ仏教協会の月刊誌パティパダー2020年3月号に寄稿しました。

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