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World Buddhist #32 映画「天気の子」がインドで上映

World Buddhist #32 映画「天気の子」がインドで上映

 

日本のアニメがインドに来る

 新海誠監督の「天気の子」がインドの映画館で一般上映されるらしい、という話は在インド日本人の間で春ころから噂されていました。インドのアニメファンが署名を集めた結果、上映が決まったということでした。喜ぶ反面、インドのことだし本当かなと半信半疑のまま数カ月が流れました。

それからインドのネットニュースで「十月に『天気の子』インド国内で公開」という情報が出て、真実味を帯びてきました。それでもまだ確信はなく、チケット予約アプリのBookMyShowを定期的にチェックしていました。このアプリ上に出てきたら本物です。ついにそのComing Soonの作品群の中に「天気の子」を見つけた時は、本当にインドで上映されるんだと実感できました。

 

新海監督もインドに来る

 毎年九月から二月頃までインド主要都市を巡回して日本映画を限定上映するイベントを、Japanese film festivalという団体が行っています。そのイベントの皮切りに、ニューデリーの映画館で「天気の子」初上映に合わせて新海監督が来場しました。

運よく参加できた人のブログやネット記事によると、インド人ファンの大変な歓迎ぶりで盛り上がったそうです。その記事を読んで初めて、インドで本当に日本アニメファンがたくさんいるのだと認識しました。

 

一般公開を観に行く

 実際にわたしも一般公開された「天気の子」を観に行きました。

予約アプリでは、公開最初の日曜日は予約でほぼ満席で、チケットを手にした人で映画館入り口に行列ができていました。あまり見たことのない光景です。

上映室内は日本人が三分の一、三分の二がインド人という感じでした。わたしたちと同じく子ども連れも多くいました。インド人の客層は、子連れはほとんどいなく、若い男性が多い印象でした。

 映画が始まり、主人公の男の子が家出して東京に降り立ち、「東京ってこえぇ……(Tokyo is scary..)」と繰り返しつぶやくシーンではインド人客からより大きな笑いが起こりました。その他に、新海監督の前作と関連した仕掛けが登場したところでは、インド人から大きなどよめきが湧き上がりました。残念ながらわたしは前作を見ていなかったので理由がわからず、何が起きたのかと戸惑うほどでした。

 映画の中で、東京が水浸しになって人々が裸足でじゃぶじゃぶと歩くシーンで、その水が透き通り、底の方が見えるほどなのがインドとの違いを感じました。もちろん映画なので美しく描いたのかもしれませんが、インドで雨が降るとよく街じゅうが水浸しになり、その濁った水の中を裸足になって歩くのはかなり危険だろうと思います。インドの映画館では、作品の途中に必ずInterval(休憩)と字幕が出て十五分ほどの中断がありますが、天気の子でもきちんとそれがありました。

 熱烈な歓迎とともにインドで迎えられた天気の子ですが、最初の週から上映回数の少なさが気がかりでした。客足が伸びて盛り返すかと期待しましたが、封切りから三回目の週末を目前にした現在、すでに上映予定の映画館がノイダというデリー近郊都市に一つしか残っていません。デリーやその隣街グルガオンでの上映期間はおよそ二週間という短さで終わりそうです。

 

なぜ「天気の子」がインドで受け入れられたのか

 比較的短い上映期間で終わりを告げそうな「天気の子」ですが、それでもインドで一般公開された初めての日本アニメとして人々の記憶に残ることでしょう。

この映画がなぜインドで受け入れられたのかと考えてみると、日本アニメファンの数が増えた結果でもあるでしょうし、神様のお話なので、インド文化に馴染みやすかったのかもしれません。

インドでは一般的にたくさんの神々が信仰されていて、祝日の多くは神様がらみのものです。そしてヒンドゥー教徒にとってはブッダヒンドゥーの神様の一人なのです。わたしの近所に住む日本人のお宅に、ゴールドに輝く大きな仏像が鎮座していました。

これはどうしたのかと聞いてみると、最近食事に招待したインド人が手土産として持って来たと言います。日本の神様のストーリーや仏像は、インド人が日本に親近感を抱くものの一つなのかもしれません。

 

 

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「World Buddhist 」は、日本テーラワーダ仏教協会の月刊誌「パティパダー」にて連載中です。

 

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