質問「自分が知っているつもり、やっているつもりになっていることが不安です」
回答(スマナサーラ長老)
抽象的な質問ですね(笑)それでは抽象的に答えます。
人間は誰でも知っているつもりです。やっているつもりです。これは誰にでも普通です。誰にでもこれがハンディ、障害なんです。
あなただけじゃないんです。家族のこと、子供のことを何でも知っているつもりですが、知るわけがないでしょ。どうやったら子供が母の気持ちをわかるのか? 一生分からないんです。
舞台の上で演技をしている人には客席しか見えません。客席の人は舞台しか見えません。舞台で演奏する人は、(自分が演奏しているときの)観客の気持ちが分かりません。
私はここに座って説法をしている。皆さんの方に座って、説法を聞く側の気持ちはわからないんです。
この知っているつもり、やっているつもりを直す方法は、直すというより問題にならないように緩和しなくてはいけません。だから簡単です。知っているつもりとは危ないんだ、ちょこちょこ(ほんの少し)のことしか知らないんだ、と。よく注意しましょうと、注意して生きてみる。気を付けて生きてみる。
たとえば、娘が17歳で突然結婚すると言い出す。ビックリでしょう。お母さんが、うちの娘は本当にいい子だったのにと、知っているつもりはダメです。冗談を交えて娘に質問をする。「相手に子供が何人いるんでしょうかね?」とかね、冗談を交えてね。それで娘さんもどんなことで突然恋が爆発したのかをちょこちょこっと答える。それで「何事でも落ち着いてやるものだから、落ち着きなさいよ」と。「反対!ダメ!」って言うんじゃなくてね。
「あんた勉強もありますから、今やるべきことがあるでしょう」と。「あとでゆっくり考えてお母さん結論出しますから」と言う。でもゆっくり考える必要もないし結論を出す必要もない。そういうのはそのうち消えます。
そういうふうに家族で突然とんでもないことが起こるのは、ほんとはとんでもないことじゃない、ごく自然なんです。でもわれわれは知っているつもりでいるんだから、そこで問題が起こるんです。
知っているつもりの人は攻撃するんです。「なんだこれは、許さーん!」とかね。
だれでも知っているつもり、やってるつもりで生きていて、みんな失敗する。それを理解すれば、自我が少なくなって謙虚になります。
2014年9月14日(日)法話と実践会よりメモしました。