(ブッダの冥想実践会2013,住吉大社武道館(スマナサーラ長老)よりメモしました)
人生をつぶす「重み」になるのが言葉です。一方で、人間を成長させる力を持つのが言葉です。
感情と理解、これを区別しましょう。
すべての生命に感情があります。昆虫にも、カエルにも、怒りや怯えがあります。
飼っているわんちゃんも、結構落ち込みますよ。機嫌を直すのに時間がかかります。慰めてあげて、いっぱい誉めてあげて、抱っこしてあげたりして。
感情の基本は生きていきたいと言う、存在欲です。
いかなる生命でも生きていきたいんですね。それを邪魔する物事に対して、怒り、おびえ、不安を感じます。
蚊も、怯えがあります。人間の血を吸わなくてはいけないんだけど、これは相当怖いことなんです。
生きることはどういうことかと、誰も分かっていません。科学は進んでいますけど、それでもまだ分かっていません。
生きるとは何か、ということは分かっていない。つまり、無知です。
生きるとは何かと分かっていると、もう怖くないんですね。
運転も、やり方が分からないと怖いですね。私は運転が怖いです、運転したことがないから。
生きるとは何かと分かると、生きていきたいと言う恐怖感が消えてしまいます。
無知の土台の上に、たくさんの感情が現れます。
仏教では、1510くらいの感情が数えられてます。一般的に1500煩悩、108煩悩といわれます。
仏教はすべてまとめて、貪瞋痴(トンジンチ)、と言っています。煩悩といえば貪瞋痴です。日本語では三毒ですね。すべての生命に共通した感情です。
次は、理解について。
理解すると言うことは、すべての生命にあるのではなく、学ぶものです。
わんちゃんも、人間に教えてもらって学びますが、理解しているかどうかわからないんですね。猫も、ドアを開けて出ていくことができる。カラスも学びます。勉強します。
必ず、種類の差、個々の差が出てきます。
人間と動物、人間同士、一つも同一ではありません。理解能力が違います。
それで生命の差が現れてきます。
理解可能ならば、言葉を使います。これがいい手段なんです。
言語能力は、言葉に限りません。カラスにも言語があります。鳴き声の種類です。音、波長の違いで気持ちを伝えます。猫にとっては鳴き方が言葉です。
魚は、音を発しないので理解能力と言うのは低いでしょう。
クジラもしゃべるし。人間に聞こえません、あまりにも低音で。
だから、理解能力があるっていうことなんですね。音を出したっていうことは、同じ種類の仲間に何かを発したということです。
理解能力があっても、どこまで使っているのかと。
そこで人間がかわいそうなんですよ。
いろいろな動物、猿など、に何かを教えると、徹底的にがんばります。理解能力のギリギリまで勉強します。
問題は、人間は自分が持っている理解能力をギリギリまで使っていますか。
人間には言語があります。世界にある言葉といえば、膨大です。
ダブっている単語もあれば、ダブっていない単語もあります。
言語の種類からみて、理解するものの大きさを表します。日本語と英語を知っていれば、理解できる範囲が広がります。
例えば、「人間」ということばはどんな言語でもあります。ダブっています。
しかし「いただきます」は、日本語ではあるが英語ではありません。
伝える内容が、言葉によって変わります。
つまり、我々がどこまで知ることができるかと、わからないほど膨大な言葉があります。
言葉と理解能力は、総合的に発展します。言葉が発展すれば、理解能力も同時に発展します。
子供は勉強すれば、理解能力が上がる。
科学も新しい発見があれば、皆の理解能力が上がります。
理解能力を用いて、人間は生命の基本的感情を乗り越えて、悩み苦しみのない精神を育てる可能性を持っています。
理解能力を使うと、感情ではない、幸福になることができます。
何か幸福になったな、とおもったら、それは理解能力の結果でしょう。
理解能力によって、どんどん究極的な幸福に達することができます。
そういうことで、理解能力は言葉と一緒です。
感情は悪、理解能力は善、と仮定します。
ここまでが、準備段階です。これから講演が始まります(笑)まだ始まってないんです(笑)
これから難しい話になりますよ。
「制御不可能な自動ドア」
私たちの耳のことです。私たちの精神状態を混乱させます。しかし注意すると、精神を向上させることができます。
耳から入る音によって、興奮される、混乱させる……。感情がかき回されます。人間として低下していきます。
敵からの絶え間ない攻撃。
耳から敵軍が自動ドアから入ってきます。敵軍とは、汚れた感情、煩悩のことです。
怒りの言葉が耳から入るたびに、心が怒りに染まります。
耳からの言葉によって、落ち込み、後悔、憎しみ、恨みなどの感情に染まります。
子供から大人まで、誰にもありますよ。耳に入った言葉のせいで、落ち込んでいる。子供なんか、落ち込みやすいんですよ、ちょっと言葉を間違ったら。
儲け話が耳に入るたびに、欲にやられます。
どうでもよい世間話、無駄話が耳に入るたびに、無知度がどんどんあがります。
言葉で我々の感情をかき回しているんです。言葉が猛毒になっています。
私たちは受け身状態です。言葉(敵)は自由に私たちに入り込んできます。
感情は、言葉の攻撃で、獣の部分が強くなります。
私たちは、二つの脳があります。原始脳と大脳です。生まれたときは原始脳です。それから人間にならなければいけない。大脳の発達です。
耳から敵が入りたいだけ入って、貪瞋痴(トンジンチ)の感情をかき回します。
脳はリピート機能で配線が強固になります。
そこで、配線ができて溶接して固定しちゃうと大変ですよ。
今まで脳科学者たちは、脳は生まれたときから決まっていますよ、と言っていましたが、しかし最近はそれは間違っていると分かりました。
脳はずっと開発されていく。脳は学ぶだけでなく、そのように学べばいいかと知っています。
自閉症も治療不可能と言われていましたが、最近は脳の開発によって治ることが証明されています。
しかし、ある年齢で脳の発展はストップします。溶接が固まっちゃうんです。そこで、ニューロンではなく別の細胞に役割を渡しちゃえばいいんです。
まだ一般的な研究ではありませんが。
言葉によって、我々は獣になっていきます。
判断能力がなくなって、感情の奴隷になってしまいます。
ウナギが、そろそろレッドリスト(絶滅危惧種)に入るそうです。
日本で80パーセントのウナギを食べているそうです。NHKで番組がやっていて、「われわれは昔からウナギを食べていたんだ。これからも食べなくてはいけない。そのためにどうしたらいいか」と。それってただの獣でしょう。
乱獲は良くないと、頭でわかっているに、獣の脳が結論を出すんです「もっと食べます」と。
我々は、「文化」と言う衣装を被っているだけで、中身は、どうでしょう? 獣の心で、感情で生きています。
味方の理性の話に入ります。
耳から、味方が入ると、理性が入ると退治するんです。
怒りを鎮めなさい、怒るなよ、という言葉も耳から入ります。
儲け話だけじゃくて、「そんな話に乗るなよ。気をつけろ」と言う言葉も入ります。
振り込め詐欺も「気をつけろ」とみんな言っています。それでもやられてしまう。
獣の感情はとても強いので、理性の言葉は排除します。味方を排除して、敵が勝利しています。
怒りの言葉を聞くと、怒っちゃうでしょ。「怒るなよ」と言われても、怒るでしょう。
私もたくさんの本を書いています。同じテーマで何冊もの本ですよ。
本当は1テーマに本一冊で十分ですよ。しかし、皆さんの心に入らないんですよ。良い言葉と言うのは入らないんです。
人は自然に、役に立つ言葉を排除します。
新興宗教の言葉に拒絶反応を示さない人も、私の言葉には拒絶反応を示します。
人間を不幸に陥れるものは、喜んで聞く。幸福にするものからは逃げるんです。
あなたの中の獣は聞きたくないんですが、聞かなくてはいけません。人格を向上するためには。
自分の子供に、勉強させることはいかに難しいか。ゲームやら漫画なら、ご飯も食べずにやってしまいます。
寝ることも一緒です。脳が怠けで眠くなる。映画を見せると寝ないで見ます。
「洗脳とマインドコントロール」
人間は、心の獣が自由に働いています。感情を刺激する言葉に弱いんです。
たとえば、今私がこの講演内容を変えて、中国や韓国の悪口を言ったら、皆さん喜んで乗ってくるでしょ。眠気もなくなるでしょう。(笑)
宗教で洗脳する場合は、怒りなどの感情に訴えます。理性が生まれる可能性を壊します。自分で判断する必要がなくなります。脳を壊すんです。
マインドコントロールの場合も、貪瞋痴(トンジンチ)に話しかけます。しかし判断は自分で任せられます。脳は洗脳ほど壊されません。
CMなどもマインドコントロールです。車の宣伝とか、いろいろなカラクリを利用して。マインドコントロールする仕組みに笑っています。「あら、車輪がついてる、しかも4つも!」というCMがありました。面白いものに興味が行っちゃうんですね。
我々の貪瞋痴に訴えている。
日本のCMの場合は「買いなさい」はないでしょ。「いかがでしょうか?」と。判断は自分でします。コマーシャルを見て、よりマインドコントロールされた品物を買います。
人に良いことをさせるためにも、マインドコントロールの手段を使わざるを得ないんです。
たまに子供が親を逆にマインドコントロールしている場合があります。これは親失格です。
どんな子供も、親にマインドコントロールされています。良い大人になるために、親が子供をマインドコントロールするんです。
ニュースで、子供が殺人をしたりと言う場合は、子供が親のコントロールから抜け出しちゃったんですね。
子供は、いたって簡単に第一言語を覚えます。覚え終わったら、配線を固定します。
それから他の言語を学べなくなっちゃう。なまりなく、第二言語を学ぶことは難しい。
歳を取ってくると学べなくなって、認知症になって死んじゃう。それはもったいないことです。たくさんの細胞が脳にはあるのです。今使ってない細胞に配線をしていくらでも学ぶことはできます。
授業で、子供がいろいろな余計なことをして、先生の話を聞かないようにしています。子供の獣が、絶対勉強してやらない、ということなんです。耳に入ってしまうと、すぐに覚えてしまうからです。意図的に、獣の脳が、学習できる脳を開発しないようにしています。
頭のいい子と悪い子は、成績表を見なくても、性格でわかるでしょう。
名前を聞けば、その子の頭の良さが分かります。頭のいい子は、しっかりと自分の名前をいいます。
子供を良い人間になるように、と育てるためには、親は結構苦労しますよ。必死です。どうしても子供たちは聞いてくれない。この性格は、どこから来たんですか、と。母親の性格でもないし、父親の性格でもない。
人を殺した子供は、両親が人殺しなわけじゃないでしょ。
子供が生まれる前から、貪瞋痴ができています。だから悪人になりやすいのですね。
(「中編」につづく)