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Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

欲がなくなると、楽しみが消えてツマラなくないですか?

「性欲は罪ですか?」から続きます。

それから欲がなくなっちゃうとつまらないんじゃないか、楽しみが消えちゃってつまらなくなる、という考え方があるそうで。

それもまだ、理解が足りないからだと思いますよ。

人間にとって喜びというのは、欲よりも、何かをやり遂げたこと、成功したこと、うまくいったこと、それがほんとに喜びなんです。

 

心を欲で動かすんじゃなくて、喜びで動かすんですよ。

それはしっかりした心理学なんです。俗世間は、喜びと欲を一緒にしているんです。だからほとんどの人々は失敗する。欲と喜びは、仏教では分けるんです。喜びと言うのは、あればあるほど人間は元気で頑張るんです。

 

欲を喜びと思っちゃうと、それでもある程度頑張るんですけど、欲はいつでも、悪結果を出しますから、どんどん付けが溜まってしまって、それじゃあだめ、ということになるんです。

 

美味しいものを食べたい。わたしは美味しいものを食べると、喜びを感じますよ、と。その人は、美味しいものを食べたくて努力する。勉強もする、卒業する、いい仕事が見つかる、仕事も頑張る。その人は、グルメで美味しいものを食べたい、という目的に達すると、その人の能力がそこでストップになっちゃう。

 

それだけでなく、美味しいものを食べていると、いっぱい問題が起きるんです。いくらでもできることじゃない、欲を満たすことは。欲を満たすと同時に、心と体が壊れるんです。だからどこまでできるのかというリミットがいつでもあります。

 

ごちそうを食べたいと言っても、それ以上食べると、心も体も堕落してしまうため、もう食べられないというリミットがあります。

 

そういうわけで、美味しいものを食べたい、その時喜びを感じる、というひとは、そこまでしか努力しない。それ以上努力したくても、体がついていかない。体が悪くなっている。心がだらしなくなっているんです。食べたいけど食べられないんだ、と心がどん底に失望感に陥って、堕落しているんです。だから欲と喜びをつなげない方がいい。理性のある人はつなげません。

 

では喜びと言うのは何なのかと言うと、分かりやすく言えば、わたしたちは何かやり遂げたところで、喜びを感じるんです。「できた!」と。

 

だから、宿題をできたら、子供はすごく喜びを感じます。なぜ子供は早く成長するのかと言うと、子供は欲もあるんだけど、喜びの感情の方が強いんですよ。だからいろいろなことをやっている。いろんなことをやることによって、子供はものすごく早く成長します。ちょっとした文章を一つ書いただけで、それでも子供は喜んじゃいますね。そこで成長していくんです。だから欲と喜びを一緒にしない方がいいんです。

 

欲は、いつでも付いています、何か破壊する原因が。

 

人の体の中にがんが現れて、がんが体の栄養分を全部勝手に取っちゃうと、見た目はどうなるかというと、痩せますね。それで、「よかった、よかった。わたしはこの頃体重が減って痩せました」と言っていいのか、と。確かにがんが現れると、体重が減って結構痩せます。食べても食べても太れません。だからといって、ダイエットするためにがん細胞を移植してもらいますかね? それは誰もしないでしょ。がん細胞は、本当に栄養を自分勝手にとって痩せてくれますけど、それがいいことですかね。人を破壊しますね。

 

欲は喜びを作ってくれます。同時に人を破壊するんです。

 

それで理性のある人は、欲と喜びは別々のものであると思います。そう思って、喜びをチェックしながらいろいろなことをやってみる。それで結構成長していきます。

 

たとえば仕事をする場合は、仕事をするときいっぱい金が儲かりますよというところに、喜びをいれちゃうと、がんに依存するのと同じく、どこかでやられます。そうではなくて、仕事できたことを喜ぶ。しっかりと自分に与えられた仕事を、よくできました、と。文句言えないように、OKになるように。そうなると、自分に喜びが生まれて、次の仕事をやりたくなってきているんです。すごくいい仕事をしたのに、自分の給料を上げてくれなかった、ということにあまり気にすることはないんです。給料が上がらなかったからと言って、その人が損をするのかと言うと、それはちょっとあり得ないんです。

その人は良い仕事をして能力を持っていますから、問題はありません。

 

それで私は言いたかったのは、若者がね、いろいろなスポーツとか参加しているでしょ。その人々は、デートしたり友達とこそこそ遊んだりとか、これはできないんです。やらせないんです。出家したような感じで、朝から晩まで自分の練習を厳しくやっているんです。でもその人々は悲しくて落ち込んでいるかと言うと、そうではないでしょ。みんな明るいでしょ。優秀なスポーツ選手の若者たちは。デートする余裕は全然ない。本当なら結婚を考える年頃ですけど。

 

一般の人々よりは、ものすごい苦しい生活をしています。でも、なんで練習を続けていますかね。なぜなら、そこに喜びがあります。欲がなくても。やり遂げるという。

 

そういうことで、そういう人々は、社会で大きな人間になります。相撲取りも苦しいでしょうね。優勝していっぱい金儲けしたいという考えはそれほど割り込まないんですよ。とにかく勝ち続けたい、と。そのために苦労を惜しまない。そちらには、われわれのように、テレビを見て喜ぶとか、美味しいものを食べて喜ぶとかでなく、努力の喜びが、精進の喜びがあるんです。

 

だから欲と喜びが、少々離れただけでも、結構大物になります。

お相撲さんは決して欲がないわけじゃないでしょうし。オリンピック選手たちが欲がないわけじゃないんですよ。あることはあるんだけど、そういう人々はちょっとの時間でも、ある年代であっても、欲を分けておくんです。

 

相撲部屋で下の方にいる間は、奴隷みたいに他の人のお世話をしなくてはいけなくても、どうにか自分の能力を上げて上げて、上に行きたいという、挑戦するべきものはいっぱいあるんだと、それに必死なんですよ。

 

だから欲を絶ったところで、成功しているんです。

 

俗世間の成功は面白いことに、欲では成功しないんです。

 

金持ちになりたくて、いろんな営業に手を出す人が、のちのち成功したとしましょう。「あの人は、金に目がなくて成功したではないか」というでしょう。あれは一般人の感想であって。厳密な分析じゃないんです。金持ちになりたいという欲があっても、その人は欲を置いておいて、苦労しているんです。いろんなものを考えて、どんな事業すればいいか、どんな方法があるかと、すごく苦しい道をたどっているんです。苦しい道を、欲を抑えて、自我を抑えて、エゴを抑えて、寝る時間を抑えて、家族との時間も抑えて、必死で頑張ってどんどん成功していく。それで後で金が入ったら、金持ちになっている。

 

そういうケースを見ても、成功したのは欲のおかげではないんです。欲を控えたおかげなんです。

 

受験勉強することは、たくさん欲を控えなくちゃいませんね。ゲームやりたいとか、友達と遊びたいとか、いっぱい、子供には子供なりの欲があるでしょう。欲が楽しいと思っちゃうと、その子は勉強しない。後でやりますと、受験が終わったら全部やりますと、欲を置いておくんです。その子は合格します。

 

そういうわけで、結論は、人間としてよいもの、得るべきものというのは何であろうとも、一時的であっても欲を抑えることで成り立つんです。

 

だから、それは心理学的なことだから、だれにもどうすることもできません。

 

在家の方々は、「仮に置いておく」ということでできますよ。

 

たとえば、今日は一日修行するぞと思ったら、仕事の欲も家族に対する欲も、欲は全部、あとでやりますと、ちょっと置いておく。一時的に欲をカットして置いておく。その瞬間にすごく成長しているんです。後回しにした欲は、その後やってもいいし、その時やりたい気持ちが消えていたらやらなくてもいいし。そこは成長する方法なんです。考えてみてください。

 

完全に、一切の欲を禁止と言いうことは成り立ちません。

 

欲のために在家は何に気を付けるかと言うと、罪を犯さないということに徹底的に気を付ける。

 

欲のトップになるのは性欲でしょうし、それに対しても罪は犯しませんということにはっきり決めます。

 

ごちそうを食べずに、まずいものしか食べないぞと決める必要はないんです。そうではなくて、美味しいものを食べたいんだけど、罪は犯しません、ということです。

 

新鮮な魚を食べたいんだけど、だからと言って、「わたしが魚を殺して、殺生はへっちゃらでいくらでもやるぞ」というのは良くない。罪にならない程度で、魚が手に入ったら、わたしは好物だからと食べてもよろしい。

 

そういうことで、欲に対して、欲を絶つことよりは、欲のために罪を犯さないということです。

ちょっと成長したいなあと思ったら、俗世間で成長したい、修行の世界で成長したい、といろいろでしょうが、その都度その都度、一時的に、欲を置いておかなくちゃいけないんです。

 

欲では成長しないというのは、原理ですよ。

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(関西定例瞑想会 2007.09.27

http://www.voiceblog.jp/najiorepo/445273.html (音声ファイル:真ん中⇒一番上)よりメモしました)

 

関連エントリ:

性欲は罪ですか?

貪瞋痴の分け方(欲と怒り)

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