質問
「生きとし生けるものと人間の関係ですが、
蚊が腕に止まったときはどう考えればいいですか?」
質問(スマナサーラ長老)
ほかの生命は殺さないんだけど蚊は殺してもいいんじゃないか、という前提で質問されている気がしますけど。
「(あなたの考えは)ほかの生命は殺してはいけない、というのはわかりますよ。それはやってはいけないんだけど、蚊は殺します」というような質問に聞こえてしまっちゃったんです。
質問者
「実際、そうしちゃっているわけなんですけど……。本当は、生きとし生けるものを愛せればいいなと思っています」
(スマナサーラ長老)
身を守ることは、ぜんぜん、罪でも善でもどちらでもないんですね。
われわれは本能的に誰だって自分の身を守る。
身を守って殺しまくるということは、自分の身を守ることにならないんですね。
身を守るならば、他の命を助けたほうが味方が増えちゃうんですね。だから慈しみで身を守ってください、ということになるんです。怒りで身を守れません。
蚊を殺すのは当然だと思った人は、嫌なものは潰すべきだという法則から逃げていないんですね。
そういう人々は人を殺してもいい、戦争してもいい、ということになっていくんですよ。
蚊に刺されないように身を守れるでしょう。
人間にそのノウハウはあります。世の中はだいたい五分五分だから、蚊は人間の血を吸う技術を持っていて、人間は身を守る技術を持っている。わたしたちにとっては、蚊に刺されないようにいろいろな方法があるでしょう。
公園を歩くならば、スプレーがある。わたしたちの国であれば、レモングラスの油やシナモン油。あれはすごく体にいいものです。そういうものをスプレーして、皮膚も元気になって蚊除けにもなる。蚊はあの香りは大嫌いです。家にいる場合は、(蚊帳など)いろいろな方法で身を守れるんですよ。
蚊は悪行為をやっているわけじゃない。
輪廻の中でこんなふうに生まれちゃって、と慈しみで思った方がいいんじゃないかなと思いますよ。
蚊はすごくかわいそうな存在なんですね。
蚊になったら血を吸わなくちゃいけないし、何のために血を吸うのかと言えば、蚊は長生きしないでしょう。卵を産んで死ぬんです。卵を産むために栄養が必要だから、血を吸うのはメスだけですね。オスの蚊は何か液体を飲んでいるだけで血を吸わないんですね。
考えてみれば本当にかわいそうな生き物ですよ。
他にも、殺菌とか抗菌とか、あまりやらないほうがいいと思いますけど、ある程度で、人間が健康にいられる程度に清潔に保つとかね。
細菌は命を支えてくれるんだからね。全体的に。隠れてものすごい仕事をしています。細菌がなければなんの命も成り立たない。だから「細菌様」と言った方がいいんです。それくらい生命を助けています。
そういうふうに、頑張ってください。
いわゆる法則は、身を守るならば見方を増やすことです。
嫌なものをつぶしちゃうということではないんです。嫌なものという単語が間違っています。
「わたしにとって」嫌なものだからね。あなたは何者かと。世間全体的に一つの生命システムとしてみなくてはいけないんですね。
一個の細胞がえらそうなことを思ったとしてもね、いい加減にしろよと。四十兆の細胞の中で一個だけ、「俺がえらいぞ」と思っちゃうと、全体的に細胞組織が死んじゃいますよ。それががん細胞でしょう。
なんで、がん細胞になるんですかね。
がん細胞になったら、われわれは自分の体の細胞なのに、殺しちゃうでしょう。放射線やら科学治療法で。
だから蚊は殺すべきというのは、がん細胞が正しいという話なんですね。わたし、わたし、ということで考えると、そういう気持ちになってしまいますね。
それでは、怒って「蚊に血を吸わせますから!」と攻撃を受ける可能性もあります。
そんな話ではないんですね。身を守ってください。身を守りたければ、味方を増やしてください。
全体を味方にしてください。ちょびちょびとうまくいかなかったからと言ってあきらめるなよと。失敗することはありますけど、それで諦めてはいけませんね。
(東京法話と実践会 2016.04.24
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