ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

ブッダの貧困対策とは?【転輪王1】

「関西定例瞑想会 2008.11.16 スマナサーラ長老法話」

 

経典の中で社会的な政策について、エピソードを使って分かりやすく語られているところがあります。

 

かつて昔(劫単位の昔)。ある王様がいて、その王様が見事に正しく真理を守って、法を守って、政治を行うんです。

そのリストがあります。何をやったかの。

 

自分の国民の問題というのは完全に解決しておくんですね。そうすると国がとても豊かに幸福になって、犯罪はゼロになって、法律が要らなくなる。そうなってくると、勝手に収入が生まれるんですね。

 

王様も困ってしまう。金がたまってどうするのかと。やることがないんです。国民は幸福で。

 

そうなってくると、隣の国も、その隣の国も、こんなふうにすごく道徳を守って、真理を守って、国民をわが子のように愛する王に支配されると、これほどありがたいことはないと言って、隣国までも支配下に入る。

 

領土が広がるんですけど、この王様は虫一匹の血も流さないんです。では隣の国の王様はどうするのかというと、「今まで通りに自国を統治してください。しかし、やり方はわたしが教えます」ということにする。

 

そうすると王様の領域が東に進んで行って東で止まる、西へ進んで行って西へ止まる。北も南も同じように。

今のインドの地図では分かりにくいんですけど、インドっていうのは島なんですよ。仏教物語で出てくるインドは島なんです。かつてインドは島でした。それが動いてヒマラヤ山脈にぶつかった。

 

このエピソードはインドが島だったころに、インドをモチーフとして語られたもので、東西南北すべて支配すると言うことは全地球を支配した、ということになります。

 

そこで王は「転輪王(てんりんおう)」という資格を取れるんです。

 

しかしその資格は、権力で取るものではありません。天から、法輪(ほうりん)が回ってくるんです。それで王様のところで、カチッと止まるんです。そうすると王様がどちらにいるか遠くからでもすぐに分かります。

 

その王には、もう一つ(の名称)で法の王、真理の王、とも言う。

 

それで王には一人の息子がいて、王様が死んだら息子が王になる。王になって間もないうちに、一週間二週間で、天から回ってきた黄金の車輪(転輪)が消えちゃうんです。

 

まずちょこっと車輪の位置がずれるんだそうです。ずれたら王様が、「わたしの命が終わりました」とわかって、息子が王になる準備をしてあげるんです。

 

王様が亡くなって一週間たつと、黄金の車輪が消える。

息子はすごく悲しくなるんです。「どうやって国を統治しようか」と。権力の象徴がなくなったんだからね。

 

そうすると、顧問の方々は、「こういう本当の権力は親から子に行くわけじゃない。自分の能力で得るものである。ですから、父親はどのように国を治めたのかと教えてあげますよ」と転輪王になる方法を王の息子に教えてあげるんです。

 

そして息子もそれをしっかり守って、そうするとほかの人々も、「あの人は父親と同じく、しっかりやっているんだから、われわれももう一度統治下に入ろう」となる。

隣国は繋がれていたわけじゃないんだから、転輪王が亡くなったら自然と離れていたんです。

 

それでまた、黄金の車輪が下りてくる。

 

当時の人間の寿命は長くて、100年で死ぬわけでもなかったみたいだし。

それで七代まで続けていった。七代目の息子が王になったら、また黄金の車輪が消えて、今までの王と同じように国を統治する項目を守りました。親を敬うこと、戒律を守ることなどなど、しかし、一つだけ守らなかった。

 

それは、貧しい人々に財産を与えること。

 

それだけはやらなかった。気が付かなかったんです。

 

それで、自分にはあの黄金の車輪が下りてこない、けれども本人は、「まあ、しょうがない」としているんです。

 

しかし、国で貧乏な人々が現れちゃうんですね。それで貧乏な人々は、お金ある人々から金を取っちゃうんですね。

当時は、誰も聞いたことがない、人からものを盗るということは。

盗みがない世の中が何万年も経っていて、みんな人のものを盗ることを知らない。みんなびっくりして、「これはどういうことか」と。

 

そうすると、これは王様に聞くしかないと連れて行って、

「この人は人のものを盗るんです。こんなことは今までなかったんだから、われわれはどうしていいかわからない」

王様は「なんであなたは人のものを盗るんですかね?」

「わたしは生活できません。金がないから」

「あ、そう。じゃあ持っていきなさい」

と大金をあげた。

そうすると、その人は金持ちなんです。

 

他の人は汗を流して頑張っていますけど、一攫千金ではないんですね。

大金をもらったのを見て、「これはいい!」と考えて、他の人も他人の財産を盗んだんです。

それで王様のところへ連れていかれて、また王様からお金をもらう。

 

次の人も同じことをやっちゃう。次の人も。これでウィルスみたいに盗むことを広げてしまった。

 

王様から考えたら、これでは困ったと思った。王様のやり方のせいで、今までなかった非道徳、「盗む」という現象が現れた。

 

次から次へと盗む人が現れた。王様は腹が立って、罰を与えていく。しまいには殺しちゃったんですね。

 

それで人々は、盗みをしたら王様に殺されるんだと分かりました。それで「なるほど。人のものを盗った人は殺しちゃえばいいや。捕まえて王様のところに連れて行っても同じことだから、王様にも迷惑だし」と自分たちでやり始めたんです。

 

これで王様の態度のせいで、今までなかった、殺しや暴力が始まりました。

このようにあらゆる罪が国の中で現われてくるんですね。

 

殺されるから、盗人が、「わたしはやってない」と嘘を言うことも始めた。

殺生やら嘘を言うことやら、陰口やら、十悪がじわじわと広がって行っちゃった。

 

それで大破壊になって、エピソードがすごく長いんですよ。人類の全滅までストーリーをつなげていくんです。

 

お釈迦様がその物語で、何を言いたいのかというと、「貧しい人にお金をあげる」というポイントなんです。

 

貧しい人にお金をあげるというのは、この転輪王になるための大事な項目のひとつなんです。

 

しかし、ここにはお金の上げ方を書いているんです。

 

農業で生計を立てたい人々がいる。米を作って、残りは人にあげて生活する。しかしその人には資金がない。土地が必要だし、種が必要だし。耕すために牛が必要だし。

 

そういうのがないと仕事ができないでしょ。

王はその農業をやりたい人に何が足りないか見て、「この人は土地があるけど牛がない。じゃあ牛を持っていきなさい」「こちらの人は、何もない。じゃあ全部持っていきなさい」と農業に必要なものをあげる。

 

そういうふうに貧しい人にはあげるんです。

 

欠けているものをあげているんです。

 

それで、別の人々は、商売をやりたい。物流させたり。商人ですね。その人たちには資金が必要。商品を仕入れるために。そこで王様はどんな商売かと調べる。

 

知識人たちもいるんですね。商売の能力もないし、農業もできない。しかしビシビシと勉強する。この知識人には仕事が必要なんですね。そこを王様は調整して、仕事を与えて給料を上げる。

 

最後に、公で仕事をしたい人。軍人とか。そういう人々は、王様の家来にしてあげて給料を上げる。

 

それでみんな仕事がある。やりたい仕事だからね。商売やりたくてたまらない人が資金をもらったら、ムチャクチャ商売やるんです。すごく喜んで。

 

そうなってくると、国民はまず忙しい。人のことを構っている場合じゃないんです。だから嘘を言ったり、噂話したり、人のものを盗ったりする暇がない。自分の仕事に忙しくなる。

 

自分の仕事に忙しくなると、収入があるんです。ここではみんなに収入があるんです。

 

収入があると、われわれは豊かになったんだと、みんな自分勝手に税金を持っていく。自分の勝手な意思で税金を納める。

 

ということで、王様のもとには最初に国民に払ったお金の何倍もが税金として、戻ってくるんです。しかし国民は苦労もしていない。

 

これは正しい王様の行うべき大事な仕事として書かれているんです。

 

そこで現代にあてはめます。

お釈迦様は、どのように政治を行うべきか、ということをおっしゃっているんです。政治家の義務。国民を豊かにすること。国民から金をだましとることじゃないんです。

 

お釈迦様は丁寧に、分かりやすく、あのエピソードだからこそ、大事なポイントをいとも簡単に理解できますよ。

 

現代の日本という国を見ても、みんなあらゆる才能を持っているんですよ。人は才能で生きていかなければいけないんですよ。

自分の持っている才能が、自分の収入源なんです。

才能があってもそれを生かせるところがなかったらどうするんですかね。

歌手がいても誰も聞いてくれなければ、どうやって生きて行けばいいんですかね。

 

だから経済学っていうのは、国民の才能が生かせる場を作ることなんですよ。

現在の経済学とずいぶん違うでしょう、考え方が。現代経済学は弱肉強食で。できる人は儲かりなさい。そうでない人・あなた方が死んでも知ったことじゃない、と。

 (経済学っていうのは、国民の才能が生かせる場を作ることなんですよ【転輪王2】へ続きます)

 

関西定例瞑想会 2008.11.16 スマナサーラ長老法話

http://www.voiceblog.jp/najiorepo/717080.html 音声ファイル・下よりメモしました。

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