質問
「安保法案が成立して、仏教徒としては、殺す殺されるような生きにくい世の中になっているような気がします。
格差の問題も含めて、今の日本と言うのは、仏教の教えとは反対のほうに言っているような感じがしてしまうんですけれども、そのとき、どうしても怒りや不安感などのマイナス感情が沸き起こってしまいます。
今の日本で、仏教徒は何を信じてどう生きればいいかということをお聞かせください」
回答(スマナサーラ長老)
あまり役に立たない質問であって、役に立たない答えをしたくないんだけど。
自分にどうすることもできないと、ただ単に妄想して喜ぶための質問やと思いますけどね。「社会全体的」にあれやこれやと言われたってもね、意味がないと思うんです。
世の中の流れはそう簡単に変えることはできませんし、変えるためにはものすごく偉大なる人格者があらわれなければダメでしょうし、それはあらわれないでしょう。人格者どころか、人間にもなっていない程度の、人格はもうあまりにも欠けている連中ばっかりだから、社会は。
あるいは、みんな一斉に立ち上がらなくちゃいけない。
日本人が一斉に立ち上がるっていうことはまるっきりあり得ないんですね。
現代社会は、一斉に立ち上がるとは、誰かの話に乗ることだからね。結局はそうなっちゃうんです。今の時代はね、それが難しいんですね。いろんな人が自分の意見をみんなしゃべれる世界だから。
たとえばデモとかやりたければ、Facebookで話しかければ、好きな人だけそちらに集まるんですよ。で、もう一人の人は、そちらに反対運動を簡単にできるんです。
そういう社会だから、わたしは放っておくんです。(筆者注:出家者は戒律で政治活動を禁止されている)
ときどき、出来事ごとには批判します。「全体的」に、ということはない。
だからおかしいのは、世の中が悪くなるっていっても、イスラム教のせいだと思いますけどね。
それには誰もかかってないし。問題を起こすのはイスラム教ですけど、問題を起こすたびに、わたしたちにいろんな制限を作るんです。「国に入るな、危険だ」とか。面白いんです。
イスラム教徒がテロ行為したら、お坊さんたちもテロリストと扱う。どういうことかようわからない。そういう世の中なんです。
直すべきところはそちらにあるんです。
宗教っていうのは恐ろしい組織ですからね。無知で無明で生きている世界だから、現実を見ない。人間を愛することは一切ない。口先だけで。だから、キリスト教はイスラム教と比較すると組織的に大きくならないで、分裂しているから危険性がちょっと薄くなったんだけど、イスラム教は世界中一つですから。危険なんですね。
それを誰も気にしていない。
それだったらどうぞ、ご自由にやってください、と思うしかないんです。
昔から仏教的に社会がいっていたたわけじゃないでしょう。
仏教は事実を言っているんだから、みんな嫌いですよ。人間には嘘が必要で、幻覚が必要です。嘘を言う人はものすごく人気がある。全体的に人間はそんなもんだから。初期時代は科学者を殺しちゃったんだから。今でも事実を言っちゃうと命がないんです。あまり変わっていないんです。
ブッダの教えと言うのは嫌われる教えですからね。
われわれ仏教徒は一向に気にしない。だから昔、地球が太陽の周りをまわっていると言ったら、毒を飲まされました。「神の教えに逆らったんだから、言ったことを否定してください」と言われて、「いえ、わたしは毒を飲みます。いくら神がそう言っても、地球が回っているんだ。太陽ではないんだ」と。
「仏教的でない」とかそんなことを言っている人は仏教ではないんです。「世界は仏教的になってほしい」と言う時点で変な思考です。仏教を信じる人は少ないのに。仏教を信じる人も仏教的にやっていないんです。
(安保法案が成立。今の日本で、仏教徒は何を信じてどう生きればいいか?(2)
に続きます)
関西月例冥想会 2015.09.21
https://www.youtube.com/watch?v=R7k8_Fvqueg
よりメモしました。
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