梵網経では、お釈迦様は、講堂でお坊様たちがスッピヤ師匠と弟子の話題を話していることを「お知りになって」、講堂へ赴き比丘たちに問いかけた、ということでした。*1
ここで、どうやって「お知りになった」のか?
それについて片山一良先生の長部(ディーガニカーヤ) 戒蘊篇I (パーリ仏典 第2期1) 補註p362に詳述されていました。
これはお釈迦様が一日をどのように過ごしていらっしゃったかがわかる、とても興味深いものだったので、要点をご紹介したいと思います。
お釈迦様のタイムスケジュール
一日を5つに分けたそうです。
- 食前の務め
- 食後の務め
- 初夜分の務め
- 中夜分の務め
- 後夜分の務め
1.食前の務め
・起床→洗面→身支度→座って禅定に入る
・托鉢へ向かう
・托鉢食を終えると、説法をおこなう
・精舎へ戻り、比丘たちが帰ってくるのを待ってから、香房に入る
2.食後の務め
・香房で比丘たちにそれぞれの修行を指導し、比丘たちはそれぞれ適した場所へ行って修行する
・香房で獅子臥(右脇を下にし、正知・正念で横たわる)
・近隣の大衆が来るので、法堂で説法する
3.初夜分の務め
・水浴室で水浴びをする
・香房のベランダに座る
・比丘たちが帰って来て、お釈迦様に質問したり教えを乞う
4.中夜分の務め
・神々が来てお釈迦様に質問する
5.後夜分の務め
・ずっと座りっぱなしだったので疲労回復のために歩く冥想をする
・香房へ入り獅子臥をする
・起き上がり、座って、過去仏たちのもとで布施や戒などにより努めた人を見つけるために、仏眼を持って世界を眺める
お釈迦様は、この一番最後の務めのときに、比丘たちが講堂で話していることを知ったということです。
そして、
「比丘たちはわたしの一切知智の能力を語っているが、十分に理解していないので、わたしが行って説明しよう。それを『梵網経』とし、この説法はわたしが入滅しても五千年間は生きるものたちにとって不死の大涅槃を得させるだろう」
と、考えて、講堂へ向かったそうです。
決して行き当たりばったりに行った法話ではなかったんですね。(当たり前か)
しかも、「みなさん何を話しているんですか?」と尋ねつつも、最初から話の内容はご存じだった、と。
まるで大人と子供の様子ですね。
お坊様たちはきっと、「スッピヤ師匠と弟子のやり取りから、お釈迦様が説いていたことの証拠が出た」とびっくりした興奮冷めやらぬまま、「お釈迦様ってやっぱりすごいんですねぇ!」という感じだったかも。
それをお釈迦様はニコニコと聞きつつ、よしよしヾ(・ω・`)という感じでお話を始められたのかもしれませんね。
まずは戒律の小戒についてお話しされました。
次回の梵網経②*2 では、中戒に入り、さらなる「出家の世界」が展開されるようです(;゚Д゚|||)
もう十分、小戒でさえ在家と出家の深度の差に青ざめましたが、まだまだ序の口みたいですね。