法輪(ほうりん)は仏教のシンボルになっていて、日本テーラワーダ仏教協会のマークも法輪です。
↑右下に法輪があります。ハスの花の上にある丸いワークが法輪です。
協会が毎月発行している機関誌「パティパダー」はB5サイズで、協会の封筒で送られてきます。
現在は新型コロナの影響で国外へ送付できないそうですが、私がインドにいた当時は毎月送っていただいていました。
という上の一文を、きっとほとんどの方はさらっと読んだと思いますが、インドに住んだ経験がある方なら「え?」と止まったのではないでしょうか。
「毎月?」「送られていた?」と。
インドの郵便事情はかなり良くないのです。
日本から手紙を送ってもらっても、着いたり着かなかったり。
インドから日本へ手紙を送っても、これまた着いたり着かなかったり、戻ってきたり。
小包の場合、ここ数年で関税が厳しくなり、2020年になるとほぼ100パーセント関税がかけられるようになりました。
それまでは、販売目的ではありません、という証明書を出すと関税を払わなくても大丈夫だったこともありましたが、2020年に入るとそれも通用しなくなりました。
ところがパティパダーの場合は、届くまで問題が発生したのは最初だけでした。
その一番最初の封筒はボロボロに破れて来て、パティパダーの角の方がのぞいて摩擦で黒くなり、少なくとも一度は水に浸かったと思われ、カピカピに乾いた状態でやってきました。
ページをめくると、ペリリ…と音が鳴りました。
一体どんな冒険をして来たのかでしょうか。
おそらく複数の場所を巡って来たのでしょう。
それでも、最後には手元に届いたのです。
これは経典風に言うと、稀有未曾有な出来事です。
なぜなら、郵便関係者が、どのくらいの人数が関わったのかわかりませんが、諦めなかった人が一人以上いたということです。
あのインドの郵便で。
それ以降パティパダーは、日本発送からだいたい10日くらいかけてきちんと手元に届くようになりました。
一度も迷子になることはなく、関税を要求されることもなく、キチッキチッと毎月やって来たのです。
この話をすると、インド在住の方はやはり驚きます。
「なんで?」
と。
たまたま超優秀な郵便配達員がいるのか。
ガネーシャがラッドゥーをお腹いっぱい食べて寝ている間に、ガネーシャの乗り物のネズミが運んで来てくれたのか。(インド・ジョークです)
そんなことを考えながら、パティパダーの封筒を眺めていたら印刷されていた法輪に目が止まりました。
もしかして、これが原因では?
インドの国旗の真ん中にあるのも、法輪です。
インドの主要な宗教はヒンドゥー教ですが、ヒンドゥー教では釈迦牟尼ブッダが第9番目の神様とされています。
なので、ヒンドゥー教徒で外国人の来客が多いお宅では、金運のガネーシャ像とともにブッダ像も置いてあることが多いです。
仏教の発祥地であることは対外的にインドが胸を張るところで、でもそんなブッダですらヒンドゥー教の神様の一人に過ぎないのだと言うのが、ヒンドゥー教徒の言い分です。
日本からやって来た郵便物に、法輪が印刷してあるのをインドの人が見たら?
これはもう、何が何でも届けなければと思ったのではないでしょうか。
もしインドへ郵便物を送ることがあったら、法輪を封筒に貼ってみてください。
高い確率でちゃんと届くかもしれません。