質問
「物惜しみの性格とはどのようなものですか?」
回答(スマナサーラ長老)
この間、月例講演会*1で話しましたけど、「人間ていうのはものを貯める」っていうね、癖がありましてね。貯めて、貯めておく。
ポイントは、貯める癖はなくなりません。いくら何でも。
「貯めるなよ」と言ったって意味がないんだ、生命は誰だって貯める癖を持っているんだと。貯めておく。いわゆる存在欲ですね。
貯める癖はなくならないんだから、貯め方に道徳が必要だと。
本当は貯めることは格好悪いんですよ。貯めたってどうなるかはわからない。知ってはいるんだけどやってしまいます。貯金を貯めても、ほとんど使わないで死んでしまっちゃうしね。
それで、貯めることに喜びはそんなに出て来ないんです。
たとえば、貯金の数字が増えていく。それを隠れて見る。「うん(・∀・)ニヤニヤ)」と、それだけですね。
それからさらにそれを隠さなくちゃいけない。友達には自分に何千万円も貯金があるとばれてはマズいんです。自分の子供たちにもそれを知っちゃうと、なんとかして取り上げようとします。だから隠さなくちゃいかんですね。
ふつうに誰かが「どうですか、どこか遊びにでも行こうか」と言ったら、「これはおそらくわたしの金をねらっているな……」と思ってしまう。その人はふつうに誘っているだけなのにね。つまらないからどこかに行こうよと、誘っているだけなのに。
だから、この貯めることでそういうふうに、暗い世界が現れてくるんですね。
何を貯めてもいいんですよ。
例えば、五十年くらいたった古い車を集める。安く手に入りますよ。もちろん安く手に入らない車もありますよ。五十年前のもの。それをランニングコンディションで維持しておく。
百年前の車が今もありますからね。道路で走れるんです。クラクションはゴムで。ハンドルは真鍮で。タイヤのホイールも真鍮で。面白いんですよ。今の価値は億単位です。
そういうものを集めちゃうとどうなるかというと、「触るな、ちょっと、ちょっと!」とかね。「うかつに開けるなよ」「座るなよ」とかね。「このシートは革張りなんだ。座るなよ」と。座らなくても毎日拭いておかなくちゃならない。結局は、楽しくなくなっちゃうんですね。
それで家に泥棒が入ったらどうしようかとか。
いろんな警備をしなくちゃいけないしね。
貯めることが、なんであろうとも、暗くなる。
自分が狭くなる。見動きできなくなる。それから、危険が大きくなる。
なのに人が貯めますよ、いくら何でも。
だから、そこが結構問題なんですね。
(続きます
関西月例冥想会 2016.6.19
https://www.youtube.com/watch?v=_HKuPEM2Ze0 を聞いて書きました。
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苦労して富を得ても、物惜しみの気持ちが入ると、心が暗く、悩み苦しみに陥って生きることになる。この世だけではなく、死後も不幸になるのです。物惜しみは、身から出る錆なのです。