前回
貯めることで暗くなる。
人間はそれでも貯めちゃう。それで使う技を学ぶということです。捨てることで幸せになる。でも存在欲がある限りは、それは理解できない。捨てることで幸せになりっこないやと思っているんです。儲かったほうが幸せでしょう。でも、わかってない。儲かっても幸せにならないんだから。使わなきゃ。
だから結局、捨てることに幸福あり、というブッダの真理は変わらなくなっちゃうんです。
その真理の立場からは、捨てまくらなくちゃあかんです。
俗世間の立場では、いつでも道徳が入っている。道徳を守りなさいと。
ブッダの世界になったら、道徳はないんです。ガイドラインは。かたっぱしからやりなさいと。
だから、ブッダの無執着の世界は、とにかく捨てて、捨てるということになります。
「これだけはちょっとありがたいから置いておく」ではダメですね。
おもしろいですよ。仏道になってくると、道徳がないんです。
俗世間になってくると、ちゃんと倫理・道徳があって、幸せにならなくちゃあかんですね。
俗世間のレベルで、何も持たずに幸せになりましょう、と言ったら貧乏になるだけです(笑)。
なにもやれません。誰も助けてくれません。「おまえバカや。なんで全部捨てたんですか。いまさら助けてくれ言うな」と。
俗世間ではいつでも道徳、倫理の中でやらなくちゃ。自分の家をあげてもいいんですよ。しかし、どんな組織に、どんな目的であげるのかと、そこに倫理道徳が必要なんです。
仏道になってくるとそうじゃないんです。
全財産を捨てる人が、それから解脱を目指しているんだから。捨てたものに、また戻ることはしません。その場合、もっと高いところを考えているんですね。すべて捨てて、何も物を持たない出家生活をするぞと。
何も持たない出家生活をするけれど、その人にまだ執着が残っているんだよと。その執着を捨てていかなくちゃいけないんです。
そういうふうに道が現れてきます。
われわれは、貯める癖は誰にでもあります。注意してもしなくても、みんな貯めちゃいます。貯めるものと貯まるもの、両方ありますから、講演の録画で聴いてください。*1
貯めるもの、貯まるもの。貯まるものは最悪に悪い。貯めるものは使い方によって、よい場合もあります。よかれと思ってためるんですね。
貯まるものには、よかれというのがないんですね。そこを区別する。
そういうことで頑張ってみてください。
質問から勝手にずれてしまいましたけどね。仏教の話ですから、いろいろ勉強になったところがあったと思います。
(おわり)
最初から読む:貯めることで暗くなる - 物惜しみの性格とは?(1)
*1:【東京】初期仏教 月例講演会「ためこまないこと」(講師:スマナサーラ長老) このDVDは、日本テーラワーダ仏教協会で、現在発売中です。