スマナサーラ長老 パーリ経典解説 2020年7月5日
ヴェールドヴァーラ経
https://www.youtube.com/watch?v=GPQjr71toOY
この経典では、お釈迦様の人物像、教えの特色がまず語られます。
ある時在家の様々なバラモンの人々がやってきて、お釈迦様に問いかけました。
「私たちは現世で贅沢三昧に暮らして、死後は天界に生まれ変わりたいのです。私たちは自分の生活を変えたくありませんが、天界に生まれ変わるにはどうしたらいいでしょうか?」
このバラモン達は、ストイックな宗教家ではなく現代の裕福な若者のような感じで、素直な人々でした。
「全てを知り尽くしているお釈迦様なら、私たちのわがままな希望にも答えを与えてくれるはずだ」という挑戦的な問いかけでもありました。
すると、お釈迦様は「ではよく聞いいてください」と語り始めました。
「ある人が、生きていきたい、死にたくない、幸せになりたい、と思っているとします。他人も同じように考えているだろうと推測します。『私は殺されることが嫌だから、どうしても他人を殺すことができません。いかなる理由があっても』と気づきます」
ここでスマナサーラ長老は、これが「正知(しょうち)」です、と解説しました。
自分でたどり着いた境地なので、本物です。他人にも伝えることができるようになります、ということです。
この説法でお釈迦様は、享楽的なバラモン達の生き方を否定することなく、彼らの考え方を変えてみせるのです。
正知の上で、三点の行いができる、と説かれます。
三点とは、教え(ここでは不殺生)を自分で納得する、それを他人へ教える、その教えを広めることができる、ということです。
その次は不偸盗についてです。
「私は自分のものを取られるのが嫌だから、どうして他人のものを取ることができるだろうか」
と正知して、同様に三点において行いが清らかになります。
次は、妄語についてです。
「私は嘘で騙されるのが嫌だから、他人に嘘をつくことはできない」
と正知して、やはり三点において言葉の行いが清らかになります。
そして、二枚舌について。
「私は二枚舌を言われて誰かと仲違いするのは嫌だから、他人に二枚舌でものを言うことはできない」
と、正知&三点清浄。
次は、悪口(人格を傷つける言葉)について。
「私は悪口を言って人格を傷つけられるのは嫌だから、他人に悪口を言うことはできない」
と、正知&三点清浄。
そして、無駄話について。
「私は無駄話で時間を損するのは嫌だから、他人に無駄話を話すことはできない」
と、正知&三点清浄。
以上、体の行い3つ(解説中に不邪婬がなかったような?)、言葉の行い4つが語られた後に、心の行い3つ(異常な怒り、異常な欲、邪見)が語られるかと思いきや、「仏法僧に対する揺らがない確信」が代わりに述べられます。スマナサーラ長老の解説によると、この経典のバラモン達は心の行いのうち異常な怒りと異常な欲について起こりうる人々ではなかったので、残りの邪見に陥らないために揺らがない確信が入ったのではないかと言うことです。
ブッダの教えを検証しなさいと伝えることで、邪見に行くのを防ぐと言うわけです。
こうしてお釈迦様は、戒律を守りなさいと言うのではなく、高貴な性格を形成してあげました。性格なので戒律を忘れちゃったなどと言うのはあり得ません。
戒律をただのルールではなく、磨いて磨いて、聖なる人格へと昇華させました。
これが聖なる戒律(アリヤーシーラ)と呼ばれます。
例えば1トンの土から不純物を除いて除いて、ほんの少しの純金を取り出したようなものだそうです。
こうして、在家のバラモン達の希望にぴったりと叶う回答をお釈迦様は提示しました。
そして、このバラモン達は三点清浄を納得して行うことで、もう絶対に堕ちない人々になりました(預流果になりました)。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以上、ざっくりと昨日のパーリ経典解説をまとめました。
まだ不確かな点があるので、随時修正していきますが、
終盤はうわーっとものすごい意外な展開が繰り広がって、これは楽しい。
経典は繰り返し語が多くて退屈に感じる時は、YouTubeの設定を1.5倍速くらいにして聞いて、引っかかったところを標準に戻してじっくり聞くと自分にあった聞き方ができるかもしれません。
最後まで聞いて、倍速にしたところがやっぱりよくわかっていなくて、戻ってまた確認したり。
するとさらに楽しいです。
今回登場したバラモン達は図々しくてどこか憎めない面白い人たちですが、今の私たちにそのまま参考になるようなお釈迦様のアドバイスが聞けましたね。