YouTube法話ガイド【19】
今月のパワーワード【愛着とは「邪見の子」】
(この文章は、日本テーラワーダ仏教協会月刊誌『パティパダー』に寄稿したものです)
先月(2021年10月)に新しく配信された、スマナサーラ長老のYouTube法話から、今月のパワーワードとしてご紹介するのは【愛着とは「邪見の子」】です。
この言葉は次の法話中に、長老が「新しく紹介するフレーズです」と仰って新登場したものです。
では、これからどう生きるか? Managing and mastering your life|スマナサーラ長老の初期仏教テーマトーク(17 Oct 2021 ゴータミー精舎)
https://youtu.be/-BzdGUnR9qk?t=6782
ここでは「邪見とは、保守主義のこと」と定義されました。
なぜ保守主義が邪見なのかというと、保守主義は無常に逆らうからだということです。「生命は弱い存在であるがゆえ、激しく瞬間的な変化を理解できない」のだと言います。そして、新たなデータがあると処理できなくなってしまうので、以前と同じデータとして理解するのだそうです。そうした無常を認めないあり方が、ここで「保守主義」とされます。
生命は、よく知っている環境で知っている物事に囲まれて生活したいという希望があり、新たな情報が過去の事例と一致しない時は迷いが生じるそうです。
そして心配、不安、怯え、緊張、混乱が起こると言います。そうやって過去に固執した概念に合わせて生きているので、新たなものは怖いと感じてしまうからこそ、人々は保守主義なのだそうです。つまり生命は基本的に邪見を持っているということになります。
そうした無常に逆らう邪見が愛着という子供を作るので、「愛着は邪見の子」という言葉として表れました。
「全てが変化していく中で、一体何に愛着を抱くのですか?」と長老は私たちに問いかけました。
そして、「愛着した対象自体が変わっていってしまうのだから、愛着は不可能なのです。自分が愛着を持った財産や趣味の品々を盗難や劣化から守っていくことは大変なことです。自分の子供にも愛着を抱くでしょうが、子供自身も変化して勝手に成長します。可愛いからと犬や猫を飼っても、みるみるうちに動物は歳をとっていき、病気になります。そして飼い主が苦しむのです」と説かれました。
そのあと、新型コロナウィルスが流行した一端に言及がありました。
「インフルエンザの流行は毎年起こっているのに、なぜコロナの流行に合わせて行動を変えられなかったのかというと、理由は愛着」なのだそうです。命に対する愛着、今までの生活パターンに対する愛着があって、変化を拒んだことが新型コロナ流行の背景にあるようです。東京オリンピックも新型コロナの感染爆発の中で開催されました。自然が変われば私たちの考え方も変わっていかなければいけないのに、変化を拒む気持ちが多かれ少なかれ私たちの中にあるようです。
法話の最後に長老のアドバイスは、「自然界の流れに合わせて自分も変化しながら流れていかなければなりません。もし、その流れの中で自分がストップすると、流れに負けて排除されます」というものでした。
真理とはいかなるものか、「無常」を通して法話を聴く私たちに擬似体験させるような説法でした。
(了)
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