現在公開中のインド映画「スーパー30 アーナンド先生の教室」は、2019年にニューデリーで一度観た事がありました。
インドは厳しい階級格差があり、貧困層が固定化されていますが、貧しい家庭出身でも超優秀な子供を30人集めて予備校で学ばせ名門大学突破を目指す、という実話をもとにした映画です。
格差社会を切り取った映画では、韓国の「パラサイト 半地下の家族」がアカデミー賞とパルム・ドールを受賞し注目されました。
「パラサイト」では、半地下の家で暮らす主人公たちの「臭い」が富裕層の雇い主の鼻を刺激します。クライマックスシーンでは、その「臭い」がある重要なトリガーともなりました。
実は「スーパー30」でも、「臭い」に言及したシーンがあったはずなのです。インド国内で観たときは。
それは30人の貧しい生徒たちのが、同じ教室で試験を受けることになった富裕層の生徒に「お前、臭うな」と言われる場面だったと記憶しています。
「スーパー30」を見るとき、観客はアーナンド先生とその30人の貧しい生徒たちの側に立って物語を追うと思います。
でも「お前、臭うな」という言葉は、現実の社会で本当はどちら側に立っているのか思い出させてしまう力を持っていました。
もし自分だったら「臭う」人々と至近距離で試験を受ける事ができるのか? と。
水道などのインフラまで全く違うほどの格差社会になったら、修復はほとんど不可能なくらい難しくなってしまうのです。
インドは、電気・水道・ガスが整ったタワーマンションの壁を隔てた隣では、水道も通っていないトタン屋根の小屋がいくつも立ち並ぶという現実があります。
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映画の中で、ひとつ仏教的なエピソードがありました。
主人公アーナンド先生の父親のセリフで、こういうものでした。
「ヴェーダ聖典がイギリスにどうして盗まれたか知っているか? 秘密にしていたらかさ。みんなに教えていれば、誰も盗むことはできない」
ブッダも、何も隠すことをせず全ての真理を語り尽くしました。
あまりにもその内容が深遠で理解が難しいという別の問題はありますが、仏法を秘密にせずにみんなに教えてくれたおかげで、誰かに盗まれて秘匿されることなく今も健在なのですね。
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それにしてもインド映画は観る人を元気にします。
派手な演出、わかりやすい心理描写、ときどき歌って踊って、現地なら「Interval」(10分くらいの途中休憩)もあって、あまり映画にのめり込みすぎずにリラックスして過ごせます。
この秋は立て続けにインド映画の全国ロードショーがあり、10月21日に公開されるのは、
派手なアクション満載の予告で敬遠されるかもしれませんが、実際に観ると笑ってしまうほど楽しいのがこの手のインド映画です。
「ウソ〜」「やりすぎだろ〜」「なんちゅうご都合主義〜」とツッコミどころも(おそらく)たっぷりで、悩みなどどうでもよくなるくらい楽しめると思います。
秋が深まって鬱っぽくなったら是非観てみてください。