ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

パティパダー2024年4月号 智慧の扉 怠けを断ち切る A.スマナサーラ

 怠けとは何でしょうか? 貪瞋痴の中の貪りではないことは確かです。貪りとは欲のグループです。欲しいものがあれば、人は怠けずにそれを追いかけて頑張ります。この場合は、怠けが働きません。つまり、欲があれば行動的になるということです。また、怒りも人がすぐに行動を起こすきっかけになります。欲と怒りの感情は行動をひきおこすので、怠けてやりたいことを後回しにするはずがないのです。欲と怒りの感情で人が活発的になっても、怠けが割り込んだらその活発さが減って消えます。人が悪を犯そうとしているとき、怠けが割り込んだら、その行為をやめるのです。だからといって怠けは良い感情ではありません。人は精進努力しないと成長しないのです。怠けは、精進する、努力する気持ちを消してしまいます。人格向上しようと励む人の気持ちを、怠けがゼロにしてしまうのです。人は貪瞋痴の本能で生きています。怠けが入ったら、心は貪瞋痴に戻ってしまう。怠けは無知の仲間です。容易に癖になってしまう性質も持っています。怠けに陥ったら、立ち直るのは難しいので厄介なのです。「勉強したい」「仕事を頑張りたい」「人格を向上したい」「よい人間になりたい」などの希望があっても、怠けに負けたら何ひとつ実行することはできません。

 

そこで仏教ではadhiṭṭhāna【アディッターナ】(決意)を勧めているのです。これは「覚悟を決める」という意味です。まず、自分がやるべきことを明確に定めます。例えば、「早起きをするぞ」と決意して一日だけでも早く起きられたら、そのとき自分を褒めたい気持ちになるでしょう。早起きのおかげで勉強や仕事がうまくいけば、さらに充実感があるのです。しかし怠けが癖になっているので、ほんの数日、早起きしたくらいでは治りません。一ヶ月間くらいを目途に「早起きをして勉強や仕事をします」という決意を持って精進してください。決意と精進をセットにして、決めたことを実行するということが必要なのです。そのセットを常に維持しないと「まあ、いいや」と怠けが再び戻ってきてしまいます。怠けがある場合、計画性が無いことが多いのです。逆に怠けを排除したければ、物事を計画的に進めればよいということです。俗世間であろうが、ブッダの世界であろうが、計画を立て実行に移すサイクルを回さなければいけません。一度決意したら「決めたことは必ずやる」というふうに頑張ってください。そうするとひと月、ふた月と経つうちに、段々と怠けが弱くなっていることに気づくでしょう。(了)

 

☆パティパダーは日本テーラワーダ仏教協会の月刊誌です。この記事はパティパダー2024年4月号に寄稿しました。