病気で悩む人の相談を聞いていると、ぐるぐる回る妄想のパターンを見てとれることがあります。それは相談者の思考の流れで、まずその問題に手をつける必要があります。そもそも病気の相談の場合、本人の「実は治りたくない」という本音が垣間見える時があるのです。「病気を治したい」というのは建前で、「本当は治したくない」という気持ちが入りこんで、事態をややこしくしています。
前提として、誰しも思考が乱れると体に影響が出てしまいます。同じ治療を受けたのに人によって効果に差が出るのは、そうした要因も否定できないでしょう。そこで仏教では「心が清らかな状態で流れるようにしてください」と言っているのです。心を清らかに保つ方法といえば、抜群に効き目があるのは慈悲です。つまり、生命を慈しむことです。具体的には、生き物が一生懸命生きていることを感動的な視点で見るのです。反対にやってはいけないことは、「他人は嫌だ」「ゴキブリはキライだ」などと、生命を差別の心でとらえることです。そういう偏見をなくして、あらゆる生命を平等に見る気持ちがあれば、自分の心も楽になると思います。心が楽を感じれば、体もそれに応じて健康的になります。
思考パターンのせいで病気になる場合、「私、私、私……」と念じていることが原因として挙げられます。「私」という妄想概念が強すぎるのです。単にフィジカルな原因で病気になった人は、医療者からのアドバイスをちゃんと聞いて素直に実行するものです。仮に胃腸が弱いのであれば、医師から指導を受けた食事を取ろうと頑張ります。胃腸が弱いのに、自分の好物だからと消化できないものを食べてしまうなら、治るものも治りません。どこか体の一部が弱いというのは大げさなものではない。それに合わせて生活習慣を変えるだけです。
おかしな言い方に聞こえるかもしれませんが、病気は「病気」ではありません。誰の体も完璧ではないからです。誰しも何かしら体に問題がありますよ。妄想の世界で「私は完璧」という概念が生まれているので、自分の体に完全さを求めてしまうのです。もし胃腸が弱いのであれば、その胃腸に親切な生き方をしてみましょう。淡々と慈悲の生き方を実践することで、まず心の健康を目指してみてはいかがでしょうか。(了)