ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論

World Buddhist #5 ブラジル仏教

日本テーラワーダ仏教協会の機関誌「パティパダー」最新号に寄稿した「World Buddhist #5 ブラジル仏教」を、掲載許可を得て転載します。

つい先日に出たばかりのパティパダーですが、現在、映画「ブラジル仏教」が、 クラウドファンディング

motion-gallery.net

ということで、時機を失しないために今掲載することにしました。

アメリカの日系移民と仏教の様子を描いた第一作目では、アメリカ国内で目標金額を上回る額が集まったそうですが、今回はいかに……。

よい作品になることを楽しみに待っています。》

 

 

World Buddhist #5 ブラジル仏教

 

 二十世紀に、アジア各国からブラジルに持ち込まれた仏教の現状を伝えるドキュメンタリー映画「ブラジル仏教(邦題)」が現在製作中だそうです。原題はTRÊS JOIASで、三宝という意味とのこと。監督の菅尾健太郎氏は、南米浄土真宗本願寺派(通称・西本願寺)の僧侶です。映画は三部作からなり、第一部「ブッダ~僧侶になったブラジル人~」の完成後試写会は、6月に京都と東京で行われたそうです。第二、第三部の完成へ向けて、クラウドファンディングが行われています。※1

クラウドファンディングのサイトでは、映画の予告編(約11分)が一般公開されているので、見てみました。そのなかで、ブラジル曹洞禅の孤圓老師はこのように語っています。「人間というのは腐敗しやすいもの。世界を変えるのは政治経済システムではないのです。わたしたちが人間をより深く観察し、物事を選び取ることができるようになって初めて、変化は起きます」

また、ブラジルにある真宗大谷派南米本願寺の釈利満氏は、「大切なのは、あなた自身の考え、行動、生き方であり、どこか外に神が存在しようがしまいが、関係ないのです。重要なのは、わたしの内なる“神”なのです」と話しています。

ブラジルは、人口の約95%がキリスト教系という国です。そのなかで仏教が伝わり、根づき、このように今なお発展していることに興味深く感じました。この「ブラジル仏教」は菅尾監督の二作目になり、一作目はアメリカの浄土真宗の軌跡を描いたドキュメンタリー映画「STREAMS OF LIGHT - Shin Buddhism in America -」(62分)。ブラジルより五十年早く仏教が持ち込まれたアメリカ仏教の様子もまた、おもしろそうです。この作品の予告編も、YouTubeなどで見ることができます。

 

ただ、今もブラジルで仏教が発展している一方で、世代交代によって、先祖から受け継いだ仏壇を処分する日系人も多いそうです。※2 「先祖は仏教徒だったが自分は違うから」と、仏壇処理の相談に寺院を訪ねてくるそうです。日本でも最近では「墓じまい」という言葉を聞くようになりました。本来、仏教とお墓は関係がないので、墓じまいと仏教の衰退は関連しないはずです。しかし、ブラジルでも日本でも、お墓や仏壇が、お寺と人々をつなぐ絶大な存在だっただけに、それが人々に必要とされなくなったとき、お寺とのつながりも一気に切れてしまうという現状は共通しているのでしょう。

仏教を“宝の持ち腐れ”にしないために」というタイトルのニッケイ(日系)新聞コラムによると、「(日系三世や四世が仏教から離れていく中で)信徒数を増やしている仏教教団もある。若い日系人やブラジル人にも教えが伝わるよう、経典をポルトガル語訳して書籍にしたり、積極的にブラジル人僧侶を養成しているところも。」と書かれています。※3

 

 日本には約18万人のブラジル人が住んでいるそうです(2016年統計)。そのうち多くは日系人だとすると、曾祖父母や祖父母、さらには両親が仏教徒である可能性は高いはずです。もしかすると、自身も仏教徒かもしれません。わたしが住む街には日系人の人口が多いのですが、お寺に通っている姿は見かけたことがありません。たとえ仏教徒とまでいかなくても、仏教に親しみのある在日日系人の方は多いのではないでしょうか。そうした方々は、近所のお寺に参拝したいと思っているかもしれません。お寺と人々をつなぐものが、お墓でなく仏法に「世代交代」するならば、日系人の方々と隣り合って法話を聴く日がやってくるように思います。

 

 

※注:

映画『ブラジル仏教』製作中=西本願寺 菅尾開教使が監督=「美しさと可能性を再発見」(ニッケイ新聞)

http://www.nikkeyshimbun.jp/2016/160304-71colonia.html

 

※2 「自分は仏教徒じゃないから」と仏壇を処分する子孫(ニッケイ新聞)

http://www.nikkeyshimbun.jp/2016/160518-columnolha.html

 

※3 http://www.nikkeyshimbun.jp/2016/160621-columnolha.html

 

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パティパダーは、一冊600円(送料込み)で頒布しています。

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