ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

仏教徒が見た「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスという映画を見ました。

gaga.ne.jp

映画のストーリーは、

疲れ果てた主人公エヴリンの日常から始まる。経営するコインランドリーに監査が入り、国税局からイチャモンをつけられ、税金の申告をやり直さなければならなくなったのだ。故郷の中国からエヴリンの住むアメリカへやって来た父親は、相変わらず頑固で介護も大変。娘のジョイは元々反抗的な上に、恋人のベッキーの存在を理解しない母親に不満を抱いている。夫のウェイモンドは優しいが、優柔不断で頼りにならない。そんな中、国税庁で役人に絞られていると、突然夫が豹変。別の宇宙のウェイモンドだと名乗る彼はエヴリンに、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と宣告! まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ! カンフーの達人である別の宇宙の〈私〉の力を得たエヴリンの全宇宙を舞台にした闘いが幕を開ける——

」公式サイトより

というもので、おそらくこのブログの読者の方々は、公式サイトのあらすじを読んでこの映画を見に行こうと思わないかもしれません。

実際に私も前半は眠気との戦いでした。

 

後半に入って眠気が去ったのは、ブッダが語った「Paṭhama udāna歓喜の言葉」の、Aneka jāti saṃsāraṃ sandhāvissaṃ anibbisaṃ (無数の生涯にわたり、あてどなく輪廻をさまよってきた)という偈が、主人公エヴリンがいくつもの人生を行き来する様子と重なった時です。

そして終盤では、カオスで戦いの絶えないマルチバース(無数の生涯)を生きるためには優しさが必要だと、カンフーアクションにスローモーションで慈悲が実践されるシーンがありました。(笑いました)

また映画ではマルチバースからの離脱として、ブラックベーグル(ブラックホール)が描かれます。ブッダは輪廻からの離脱として涅槃を説きましたが、もちろんブラックホールとは全く別物です。

慈悲の実践まではブッダが説いたこと被っているところも多々ありましたが、最終的に結論が異なるのは、幾多の人生を繰り返し生きることの苦しさをどのように捉えたか、その分析内容が違うからでしょう。

どんな人生も結局苦しいのだと理性で辿り着いても、ではどうしたら良いのかとなると、普通は「有」の対極としての「無」(ブラックホール)しか導き出せないものです。

それがなぜなのかと考えてみると、どうしても自分の感情が客観的な分析を邪魔するからだと思います。感情は仏教的な単語では執着と同義になります。

「涅槃への道はシンプルだけれど遠い……」

そんなことを思いながら映画館を後にしました。

 

Aneka jāti saṃsāraṃ sandhāvissaṃ anibbisaṃ (無数の生涯にわたり、あてどなく輪廻をさまよってきた)という偈で始まる「Paṭhama udāna歓喜の言葉」の解説法話が、パティパダー2023年4月号(2023年3月20日発行)に掲載予定です。

また同じパティパダーで「智慧の扉」にも「Paṭhama udāna歓喜の言葉」についての短い法話が掲載される予定です。

釈迦牟尼ブッダが解脱の喜びを語った真意に迫っています。お見逃しなく。

パティパダーの購入先

https://j-theravada.com/contact/inquiry/

 

最近はこの映画の他に「科学者が語る食欲」を読みました。

次回のカテゴリーDiaryで「仏教徒が語る食欲」というタイトルの記事を書く予定です。