ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

【智慧の扉】問題解決に進むための「戦争反対」

最新のパティパダー2022年5月号より【智慧の扉】を許可を得て転載いたします。

【智慧の扉】は、スマナサーラ長老のご法話を編集させていただいたもので、パティパダーを開くと最初にある記事なので「智慧の扉」と名付けられています。

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問題解決に進むための「戦争反対」

A .スマナサーラ

 

 世の中では善人と悪人を区別します。

頭ごなしに「私たちが正しい。君たちが間違っている」という態度では話し合いになりません。皆が同じ性格を持つわけでなくても、悪人でも敵でもないと理解すれば、問題解決は話し合いで進むのです。

 

仲間割れが起きた時、場合によってはお互いに離れて、その上で「仲良くしましょうよ」と提案することができます。

喧嘩別れをする必要はないのです。人間は平等なので、一方が偉くてもう一方が従うべきだという理屈は成り立ちません。たとえ小さな組織や民族であっても、巨大な組織・民族と平等です。しかし多くの小規模な民族は、多数派の民族に脅かされている現状があるのは残念なことです。

 

スリランカには先住民族のヴェッダ人がいます。

森の中で暮らし、ヴェッダ人は固有の言語を持つと主張しますが、我々はその言語を理解できます。シンハラ語と大変似ているのです。しかし決してヴェッダ人は自身をシンハラ民族であるとは言わず、ヴェッダ民族として観光業を生業にして堂々と生きています。原住民としての存在に誇りを持っているのです。現在では、ヴェッダ人は教育レベルが高くて国際情勢にも詳しく、シンハラ語も自在に使えるはずですが、あくまでヴェッダ語を話してシンハラ民族に同化することはしません。周りの我々も、ヴェッダ民族に敬意を払っています。スリランカでは他の民族同士で対立がありますが、ヴェッダ民族とは対立を起こしていません。ヴェッダ人はスリランカ政府の批判をしますが、弾圧を受けるどころか、あの方たちの話も聞いたらどうですかと周りが丁寧に対応するのです。

 

 私たちは人間同士平等に付き合わなくてはいけません。

しきたりや習慣にさまざまな違いがありますが、誰もが自分のアイデンティティを守る権利があります。他人を抑え込むことは人間らしくない行動です。力でねじ伏せて強者が勝ち残るというのは原始時代の話なのに、いまだに戦争を起こす国々はそういう考え方をしているのです。それぞれの文化を守って、誰も偉くないのだ、皆が対等なのだという生き方をしていないのだから、戦争まで引き起こしてしまう。これは野蛮な人間のやり方です。

 

日本の私たちがとるべき態度は「戦争反対、人殺し反対」と言うことで、どちらか一方の肩を持つことではありません。

「悪人は誰ですか?」という敵探しでもないのです。私たちは慈しみを持って、全ての人々が平和でいてほしいという立場を貫きましょう。「全ての人々」であって、そこに国や民族、宗教などによる選別があってはならないのです。

(了)