ブッダ ラボ - Buddha Laboratory

Namo tassa bhagavato arahato sammāsambuddhassa 仏道実験室の作業工程と理論、実験結果

【智慧の扉】業を攻略し、業から脱出する パティパダー2022年6月号

「智慧の扉」は日本テーラワーダ仏教協会誌パティパダーのコンテンツです。

スマナサーラ長老の法話から編集させていただきました。

ここでは許可を得て転載いたします。

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【智慧の扉】業を攻略し、業から脱出する

A.スマナサーラ長老

 

 私たちは地球の上に生きているので、地球が回転すると自分も回転します。

地球が回っているのに「私は回りたくない」と逆らうことはできません。私たちは地球にいるかぎり地球の法則から抜けられないのです。地球の環境が汚染されたら皆がその影響を受けるように、自分の心も宇宙法則の中で互いに影響を受ける小さなパーツに過ぎないのです。

私たちは、自分の心が周りを汚染しないように、周りから汚染されないように、正しい生き方をすべきです。その方法を発見したのがブッダです。

仏教では生命が意志でする身口意の行為とその結果を「業」と言います。この業を管理することで、宇宙のなかで幸福に生きることができるのだとブッダは説くのです。

 

 たとえば、これまで長い間悪行為ばかりしてきた人でも、業を管理すれば性格を変えて幸せになることができます。

悪因に悪果があることは変更不可能ですが、悪行為をした人の心が善に転換することで、過去の悪果が実る条件も消えてしまうのです。仏教で強調するのは、「悪いことをしても後悔するな」ということです。これは開き直りではありません。後悔という悪行為によって性格がどんどん悪くなると、他の悪果を引き寄せる条件も整ってしまうのです。私たちは何が悪行為で何が善行為なのかをブッダに学んで、幸せに生きられる条件を整えるべきです。

 

 しかし、ブッダの教えはそれだけで終わらないことも忘れないでください。

幸福に生きるための業のマネジメントを説いたあとで、ブッダは「業なんか蹴っ飛ばして破壊しなさい」と教えるのです。解脱・涅槃というのは、業を蹴っ飛ばして破壊した境地のことです。仏教は業にもとづく正しい生き方を超越して、業=生きることそのものからの脱出を説く教えなのです。

 

 業によって引きずられて、限りなく輪廻転生していく私たちは、結局のところ業の奴隷でしょう。

地球に生まれたら地球の法則に従わざるを得ません。地震が起きたら「私は地震が嫌い」と拒否する術もありません。地震であれ津波であれ、地球の法則の一部である私たちはただ飲み込まれていくのです。そうやって法則に操られて輪廻転生し、心は生滅しながら限りなくつながっていきます。これには何のありがたみもないのです。

ですから、「業の鎖を引きちぎって輪廻転生から脱出しなさい」とブッダが教えているのです。

(了)

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今月号の智慧の扉は、もう一つ「他人の評価を通じて成長する」がパティパダーに掲載されています。

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パティパダー紙面にはネットに載らないレア情報(各地サークル・イベント情報など)もあります。